Broadbill - Birdwatcher's site

コスタリカ探鳥報告


1999年5月の旅行結果より


Black-headed Trogon male © Koji TAGI

 コスタリカは中米に位置する小さな国です。以前は、バナナとコーヒーが主産業の小さな農業国でした。近年、その豊かな自然を生かして、様々な観光産業が育成され、現在ではエコツーリズム先進国とまで言われています。

 コスタリカは、バードウォッチャーの間でも世界的に有名です。カリブ海と太平洋に囲まれた小さな国には、これまで800種以上の鳥が記録されています。これは、この国の自然環境の豊かさをよく表しているといえましょう。この中には、鮮やかな羽色でマヤ文明の象徴として知られるケツァール(カザリキヌバネドリ)、不思議な生態を持ったジャノメドリ、巨大なコンゴウインコ、虫のように小さく鮮やかな羽をもったハチドリ類、巨大な嘴に鮮やかな羽色のオオハシ、特異なディスプレイをするマイコドリの仲間・・・。

 1999年5月、会議に出席する関係で、コスタリカを訪れる機会がありました。このページは、そのときの旅行報告を基にしたものです。

 1999年4月、5月に開催される第7回ラムサール条約締約国会議に出席するべく、コスタリカへの渡航準備を進めていた。コスタリカは小さな国だが、野鳥の数はずば抜けて多い。その中には、憧れのケツァールもオオハシもいる。仕事も仕事だが、多少大枚をはたいてでも、鳥を見ないわけには行くまい。
 まず、仕事が終了する18日から3日間をバードウォッチングに充てることに決める。
 スペイン語圏のコスタリカでは、挨拶程度しかできない私には旅行も難しいだろう。次にガイドを雇うことに決定。ホームページを毎日のように調べて、
"Finding birds in Costa Rica"というサイトで、ガイドをしてくれるRichard Garriguesという人を見つける。早速連絡を取り、一日US$100で案内を頼む。準備は上々。後は仕事をきっちり済ますのを待つのみ。

5月18日

待望のバードウォッチング旅行初日。昨日で仕事も終わり、体はくたくただったが、今日から鳥を見られると思うと、自然に気分が盛り上がってくる。

ガイドのリチャードは5時に宿泊先のホテルへやってきた。コンピューターと大きなかばんをホテルに預け、一路山の中へと向かう。

初日の狙いはケツァール。1時間半のドライブの後、標高2,600mの高地へたどり着いた。山地に着くとすぐ、ハシナガシトド(Peg-billed Finch)やノドアカアメリカムシクイ(Flame-throated Warbler)が出迎えてくれる。人家の庭らしきところに車を止め、探鳥開始。リチャードいわく、ここはQuetzal Mirador(写真右)というそうで、個人の農場を一般開放して、鳥を見せているらしい。

標高が高いためか、急途坂を登るとかなり息苦しい。農場のガイド、クリスチャンはわずか15-6歳にしか見えないが、急な斜面をすいすい登っていく。追いかける方が息が切れそうだ。ここでよく姿を見かけたのは、ヒノドハチドリ(Fiery-throated Hummingbirds(写真左)。低い藪の枝先に止まり、他の個体が来ると、猛烈なスピードで追いかけっこを始める。大きさは11cm。ハチドリの仲間にしては大きいが、日本で言えばメジロサイズ。小さい。写真では分かりにくいが、赤い喉が印象的。もう一種見られたハチドリはバラエリフトオハチドリ(Volcano Hummingbird)。こちらはさらに小さく、7.5cmほど。人差し指ほどの大きさだ。飛ぶと、「ブーン」と羽音がする。
リチャードやクリスチャンの案内で、ケツァールの巣を見せてもらう。枯れ木に穴を掘って作るらしい。肝心の主はお出かけ中。見られないものは仕方がないので、近所を散策。アメリカムシクイの仲間、クビワアメリカムシクイ(Collared Redstart)はまるでオウギビタキの仲間のように、尾羽を広げ、くるくると飛び回る。フウキンチョウの仲間のアオボウシミドリフウキンチョウ(Golden-browed Chlorophonia)はエメラルドグリーンの体に黄色のお腹をしていて、とても綺麗だ。コツグミ(nightingale thrush)の仲間が美しい声でさえずっている。遠い空の上をエンビトビが飛んでいる。長いツバメのような尾羽はどんな風に使っているのだろう。
肝心のケツァールに会えたのは、雨が降り出してから。高地の熱帯林では、午後には必ずといって良いほど雨が降るらしい。霧雨の中、大きな緑色の鳥が20mほど離れた枯れ木に止まった。メスだ。それでも普通のキヌバネドリよりも鮮やかな色をしている。下尾筒が赤く、とても綺麗。でも、30分以上待っても結局オスは戻ってこなかった。雨のせいで冷え込み、やむなく退却。
この日はサンホセに戻って一泊。明日は太平洋側へ出るという。


5月19日

朝四時半起き。さすがに眠い。リチャードは今日、Carara Biological Reserveへ行くと教えてくれる。道中、ハチクイモドキ(motmot)の仲間2種(Turquoise-browed & Blue-crowned)に会う。ハチクイそっくりの外見だが、中央尾羽2枚にハート型の飾りがついている。習性もやや異なり、もっと藪の中に入るようだ。それでもたまには明るいところに出てくるようで、電線に止まってたアオマユハチクイモドキ(Turquoise-browed Motmot)は、まるで糸が切れて引っかかった凧か、昔の水洗トイレの紐のようだった。あの尾羽を引くと、水が流れてきそうだと思った私は古い人間かもしれない。

今日も朝食はコーヒーと赤飯とスクランブルエッグ。コスタリカの人の平均的な朝食はこれらしい。毎日赤飯というと、なんだか毎日特別な日みたいだ。朝食に入った店の庭先でニッケイハチドリ(Cinnamon Hummingbird)に出会う。

さて、二日目のメイン、Carara Biological Reserveに到着。着いてすぐ、色んな鳥の歓迎をうける。パナマハグロキヌバネドリ(Baird's Trogon), ヒメキヌバネドリ(Violaceous Trogon), サカツラハグロドリ(Masked Tityra), バラノドカザリドリモドキ(Rose-throated Becard), ハシナガタイランチョウ(Common Tody-flycatcher)....入り口の木にはコンゴウインコ(Scarlet Macaw: 写真左)が止まっていた。「あれ、野生?」、「さぁ・・・。」という会話の後、コンゴウインコはゆったりと飛んでいった。「どうやら、野生みたいだね。」
事務所で入場料を支払う。どこでも人気があるのか、ケツァールとオオハシのTシャツはいろんな種類がある。でも、Tシャツじゃなくて、実物が見たい。

公園の入り口でハキリアリの通り道を見つける。幅1センチほどの地面が綺麗に掃かれていて、木の葉を持ったアリたちが行列を組んで歩いている。うーん、テレビで見たそのまんまだ。(当たり前や!)
森の中ではシギダチョウ、ハチドリ、オニキバシリ、アリドリらの仲間に会う。いくら見ても印象に残らないのがタイランチョウ。しばらく歩いてから、「あれ、さっき見たのはなんだっけ」
昼前に一旦ホテルにチェックイン。川の河口へ行って、水鳥見物。ベニハシヘラサギ
(Roseate Spoonbill)やアメリカトキコウ(Wood Stork)がいるけど、なんだか・・・。やっぱり森の小鳥の方が楽しい。このあたりの電線には、もじゃもじゃしたものがよく引っかかっている。air plantとか言うものらしい。日本では、ティランジア(だったかな)として知られている。根が地上に着かなくても、空気中の水分だけで生きていけるらしい。でも、電線に着床したときには、さすがに、「しまった」と思ったことだろう。それとも、電気から栄養源を取っているのかな。うーん、こうなると、ほとんどウルトラマンの世界だ。
午後、場所を変えて、再度保護区の中へ。もうちょっと開けた環境のためか、鳥が見やすい。フウキンチョウたちが色んなところで見られる。鮮やかな青い色のルリミツドリ(Red-legged Honeycreeper)はなかなか印象的。ちょっとタイヨウチョウに雰囲気が似ている。マイコドリの仲間、オレンジマイコドリ(Orange-collared Manakin)を見つけたのはリチャード。オスはメスの前で、手を叩くような音を立てて、円を描くように飛んでもとの枝に戻る、とても変わった求愛行動を行う。リチャードが手を叩いただけで、他のオスが入ってきたと思って出てきたらしい。
大きな声を上げて飛び交うのはコンゴウインコ。カラスよりもはるかに大きい上に、赤や青や黄色の鮮やかな羽をしているものだから、目立つのは目立つが、どうも声がいただけない。反対側の林からはホエザルの仲間、
 Mantled Howler-monkeyがこちらは唸っている。これもなんともいただけない声だ。
水辺では、ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)がそれこそボートを逆さに加えたような、なんとも巨大な嘴を持って眠っていた。あれだけ大きけりゃ、なんでも捕れることだろう。アライグマの仲間、ハナグマがフラフラと道の上を歩いている。雑食性の彼らは果物でも昆虫でも何でも食べるようだ。

結局、この日は110種以上という、素晴らしい種類数を記録したが、目当てのオオハシをはずしてしまった。あと一日で探鳥も終わる。


5月20日

コスタリカバードウォッチング最後の一日。やっぱり三日間じゃ物足りない。それでも後一日しかない。朝方、Cararaへもう一度ニショクキムネオオハシ(Chestnut-mandibled Toucan)の声はあるが、姿はなし。

疲れがたまっていたためか、車中ではほとんどぐっすり状態。リチャードの肩を叩いて起こされた。「まぁ、起きなくても良いけど・・・」と言って、指差す方向を見る。おぉ!ケツァールや!しかも見たかったオス。エメラルドグリーンそのものの羽は曇天の中でも光っている。腹は真っ赤。顔には綿のようなふわふわした飾り羽がある。尾羽はまるでショールでも巻いているかのように、長く下に伸び、風もないのに揺れている。うーん、見事や、他になにもいう気がしない。
ケツァールは近づいても全く動く気配がなく、じっと森の中にたたずんでいた。あぁ、しまった、600mmのレンズを持ってきていたら、きっちり写真が撮れたのに。と、どこまでも雑念がいっぱいの僕はいつまで経っても悟りを開けないのだろうな。

次に立ち止まったのは、ハチドリのために餌台を置いている雑貨屋のような店。目の前のフィーダーに色とりどりのハチドリがやってくる。大きな紫色のムラサキケンバネハチドリ
(Violet Sabrewing)から、6cmほどしかない、小さなドウボウシハチドリ(Coppery-headed Emerald)まで、10種類あまりのハチドリを観察できた。
次に叩き起こされた時、50mほど離れた木の枝にとまっていたのは、待ちに待ったサンショクキムネオオハシ
(Keel-billed Toucan)だった。その巨大な嘴は驚くほど軽いという。黄色い顔に黒い体。黄色と水色と赤の模様の入った嘴。どれだけみても間抜けにしか見えないところが味があっていい。
午後、最後に立ち寄った、
La Selva Biological Stationで、ニショクキムネオオハシシラガフタオタイランチョウ(Long-tailed Tyrant)、キンズキンフウキンチョウ(Golden-hooded Tanager)などを見ることが出来た。あいにくの雨で、鳥の方はそれ以上見ることが出来なかったが、イチゴヤドクガエルやハナグマをじっくりと観察できた。

夕方6時過ぎ。無事にサンホセ市内に到着。レンタカーを返却し、リチャードに別れを告げ、ホテルへ戻る。明日の朝は空港だ。

わずか三日間の旅だったが、200種以上の鳥を見ることが出来た。コスタリカはまさにバードウォッチャーにとって、天国のような国だ。近い日にまた訪問することを誓い、小さなサンホセ空港を後にした。


左: アオノドハチドリ( Magnifiscent Hummingbird ) 
右ハイバラエメラルドハチドリ( Rufous-tailed Hummingbird

© Koji TAGI


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