オランダ紀行
2001年11月28-12月2日

11月28日 茨木 - 関西国際空港 - Schipol - Wageningen

 ヨーロッパとは縁がないらしく、オランダはおろかヨーロッパへ行くのははじめてである。10時間以上も飛行機に乗ると思うと気が重い。こんなときに限って、リムジンバスが遅れに遅れ、予定よりも40分遅れて関西空港に到着。まだテロの影響が残っているのか、それとも時期的なものなのか、空港は閑散としており、ボーディング、入国ともに簡単に済む。今回の会議の出席者であるT先生と出発ロビー内で会い、軽く打ち合わせした後、搭乗。KLMの機内は思った以上に狭い。特に前の座席との間隔が狭く、満席だとさぞ苦痛だろう。幸い空席が目立ち、行きも帰りも狭さを意識せずに済んだ。

 KLM機は大阪を出発して日本海を北上し、サハリン上空付近から西進し、大陸に入る。極東シベリアの大地はもう一面雪景色だった。機内では「ドクター・ドリトル2」を上映していた。どういうわけか、続編ものの映画は最初のものを超えて面白いものはない。残念ながら、「ドクタードリトル」も馬鹿馬鹿しさといい、前作の方が上だった。

 Schipolにはほぼ定刻どおりに到着。14時を回っていた。機内でずっと会議資料を読んでいたため、ほとんど眠っておらず、到着早々少し眠気を感じる。入国はあっさりとしており、なんの滞りもなく終了。空港からは電車でEde-Wageningenまで行かなくてはならない。電車のチケット+乗合タクシーのチケットを購入する。合計で32ギルダー(約1600円)。合計で2時間弱ほど乗ったことを考えると安かった。

 オランダの鉄道は広軌らしく、線路幅が広ければ、車両一両の大きさも大きい。駅は薄暗く、なんの表示もない。プラットホームの上を横一列に近い状態で人が列車を待っている。オランダは喫煙人口が多いのか、ホームの上は白く煙っている。髪の毛を脱色した若い女性がいたり、抱き合っていちゃついているカップルがいたり、様々。列車が到着すると、我先に皆列車に乗り込む。アカン、こんだけ勢いつけて乗り込まれたんでは・・・。気がついたら我々は最後尾だった。電車の中は満員ぎゅうぎゅう詰め。乗ってすぐにドア付近の座席に座っていた人がT先生に席を譲った。その後、ダーヴェンドリヒト駅でintercityの郊外型の列車に乗り換えたが、降りる駅を尋ねたところ、「次の駅だよ」と丁寧に教えてくれたようなところからも、案外人は親切なのかもしれない。

 Ede-Wageningenへ到着後、タクシーで会議場となっているホテルへ。タクシードライバーは若い人で、「中国人?」とか、「日本へ旅行しようとしたらどのくらいお金がかかるの?」と好奇心いっぱいに聞いてきた。ホテルが大体一泊1万円以上するという話をしたら、「高すぎる!」とずいぶん驚いてたが、後々きっちり計算してみたら、オランダもどっこいどっこいに高かった。このタクシードライバー、かなり陽気な性格で、前のタクシーが知り合いのタクシーだと、盛んに手は振るし、携帯電話がかかってきたり、私と話をする際にも前を見ないで話をし始めたり・・・。いくらなんでも危ないっちゅうに。

 5時前にホテルに到着。ホテルというよりも、滋賀県庁とか茨木市役所に似たずいぶん殺風景なホテルだが、一応レストランもバーも完備していた。エレベーターに乗り込もうとボタンを押すと、表示は点灯しているのに中に入れない。エレベーターのドアが手動式と気づくのにしばらく時間がかかった。

 オランダの便器は日本のものと一見似ているが、座ってみて違和感を感じた。水貯めが後ろではなく、前にある。傾斜も逆で、後ろから前である。一見効率が良さそうに見えるが、これでは斜面に固形物がこびりついてしまう。実に非効率的に思えた。小の方は小の方でお椀のような形をしている。日本式に朝顔をという呼び名がこちらでは使えそうにない。小の容器の縁にハエがへばりついているのかと思ったら、陶器のマークかなにからしい。日本の誇るTOTOもINAXも見かけなかった。そういえば、日本車も少ないな。

 夕食はホテル内で取らず、外食することに決めた。先乗りしているN氏に連絡を取り、T先生と3人で近くの中華料理店へ入ってみた。メニューを見ると、オランダ語(当たり前だが)だ。英語と似た単語からメニューを拾い出してオーダーするのも面倒くさく感じたので、コース物を皆で注文。中華料理店なのに、なぜかサテーがあったりする。オランダ人にはインドネシア料理も中華料理も似たようなものなのだろう。中国系のウェイターがオーダーを取りに来たので、2人分のコースメニューを3人分にできないか交渉。中国人の感心するところは、移住した先の言語を見事に解することだが、これが見事に英語が通じない。生ビールといったのに、缶のハイネケンを持ってきた。面倒くさいから、まぁいいか・・・。


11月29日
 

 会議初日。少し早めにと思っていたら、6時過ぎに自然に目が覚めた。外はまだ暗い。そのうち明るくなるだろうと思っていたが、8時を過ぎても明るくならない。ぼんやり明るくなり始めたのは8時半を回った頃から。

 朝食、昼食はホテル内のバイキング形式のもので済ませた。朝食とはいえ、暖かいものがゆで卵だけというのもずいぶん簡素な食事だ。ほとんど生野菜を目にすることがなかったのだが、日照時間の短さからも、冬に野菜は育たないのだろう。ポパイがなぜ缶詰のほうれん草を食べているのか、気候的なものと関係あるのかもしれない。

 結局この日は一日ホテルに缶詰。

11月30日

 二日間ホテルの中にいたので、朝8時半前からホテルの近くの公園まで散歩。町の中をライン川からの運河(水路と言った方が良さそうだが)が細かく通っているらしく、風情がある。公園にはマガモ、バンなど日本でも馴染みのある顔が見える。林の縁からはなぜかミソサザイの大きな声が聞こえてくる。冬なのに関係なく囀るものらしい。小さな「ツー、ツー」という声の主はアオガラ。日本にいるヒガラと同サイズで小さく、動きもその分素早い。ツグミらしい鳥があちこちで見かけられたが、街中のものは全てクロウタドリだった。「チッ、チッ」というホオジロ類を鋭くしたような声はヨーロッパコマドリ。アスファルトの道の上をピョンピョン跳ねていた。これほど身近な鳥なんだと感心した。街中を飛ぶハトほどの大きさの黒い鳥はニシコクマルガラス。日本のカラスたちに比べて、ずっと小さい。この他、タンシキバシリ、ヨーロッパアオゲラ、ズアオアトリ、シジュウカラなどを目にすることが出来た。

 会議はこの日は分科会。総会よりは興味を持って聞けたものの、発表会の域を出ていない。欧米の人はこういう会議からaction planだのstrategyだのといったものを作るのが好きらしい。

 夕食は他の日本からの参加者とともに町へ出かける。ホテルの一歩裏側の道を入ると旧市街らしく、石畳の繁華街に出た。金曜日ということもあり、店の大半が遅い時間まで営業しているためか、町には人が多い。移民が多いのか、中国系、アフリカ系、アラブ系など、様々な人種が歩いている。子供同士で遊びに来ているのをよく見かけたが、夜が長い分、夜の遊び方でもあるのだろうか。店構えは簡素な店が多く、日本のようにギラギラと飾り付けをしている店はあまりない。葉巻屋だの、チーズ屋だのあるところはさすがオランダというべきか。チーズ屋でゴーダチーズを購入。花火の玉みたいな形のBaby Gohdaが日本円で約500円ほど。帰宅後切ってみたが、臭いと濃いめの味にあまり量を食べることが出来なかった。

 雰囲気の良いレストランを見つけて入ったが、予約一杯と断られる。オランダは外食の習慣があまりないらしく、レストランの数もあまり多くない。週末くらいは外で・・・という人も多いのだろう。この後、無事にレストランを見つけて入ったが、味の方は典型的なアングロサクソン系の味だった。

12月1日

 午前中はエクスカーション。朝9時に大きなバスが迎えに来る。参加者が100名以上いるのに、入るのだろうか、と思っていたが、かなり収容能力があるらしく、大半の人が無事に収まった。エクスカーションはライン川下り。川下りそのものは流れがほとんどないため、あまり面白みのあるものではない。ゆっくり流れる景色のところどころでカモが浮いていたり、ガン類が採餌していたり・・・。ハイイロガンやダイシャクシギ、タゲリが至る所で群れている。ハイイロガンの中に時々カオジロガンが混じっている。川岸に広い草地が広がっているのだが、冬と夏で水量が異なるため(冬が雨季なので水量が上がる)、堤防を2段階に分けているらしい。この草地は夏は放牧地になるんだとか。ガン類に混じって、時々エジプトガンを見かける。篭脱けしたものが増えたらしい。オランダだけでも数千羽はいるんだとか。篭脱けにしてはスケールが大きい。ヨーロッパでは、アメリカ産のアカオタテガモが増えていて、カオジロオタテガモという在来種と交配して問題を起こしているとか。毎年相当数が駆除されているらしいが、放鳥して駆除する羽目になってるんだから、馬鹿馬鹿しい話でもある。

 T先生は「ラインの水を」といって、フィルムのケースに水を汲んでいらっしゃったが、流れのゆるい川の常として、水質は悪そうだ。

 午後のセッションが始まる前に明日の列車のチケットを買いにtourist informationへ。町の中で顔を黒く塗った鼓笛隊に遭遇。ビスケットを配っていた。クリスマス前のイベントなのだろうか?

 この日も夕食は外食。そういえば、レセプションの日以外、ホテル内で食べることはなかった。スペイン料理店があったので入ってみると、”もどき”でスペイン料理的なものはパエリャくらいだった。wolf fishというものがメニューに載っていたのでオーダーしてみたところ、名前そのままにオオカミウオだったらしい。案外淡白であっさりしている。日本人好みの味だと思うのだが、北海道でもあまり食べないらしいが、ヨーロッパでは広く食べられているとか。美味だったのは生ハム。カウンターに置いてある「そのもの」から切って出してくれたのだが、歯ごたえがあってうまかった。前日の夜も感じたことだが、こちらのビールはややアルコールの臭いが強いように感じた。

12月2日

 久しぶりに雨が上がる。その代わり、霧が立ち込め、やはり外は薄暗い。一足早く帰国するため、参加者に分かれを告げる。タクシーが予定していたより遅く着いたため、列車を一本見逃す。Schipolまでの車内は行きとうって変わってガラガラ。日曜日は皆教会にでも行くのだろうか。車中、右手に運河が見える。昨日のエクスカーションの最中もそうだったが、砂を運んでいる船を度々見かける。海岸から内陸に運んでいるのだろう。

 Schipolでのボーディング、出国は脅されていたほど時間はかからず、結局2時間以上も時間が余ってしまった。チーズやソーセージがあちこちに売ってあるのはさすがである。空港内に手巻き寿司のカウンターがあり、中国系の男性二人が握っていた。

 帰りのフライトはそこそこ搭乗があったが、それでも後部座席に空席がずいぶんあり、のんびり寝転がって帰ってくることが出来た。短期間で実質会議場近辺だけをうろうろしただけだったが、アメリカともオーストラリアとも異なるヨーロッパの雰囲気に少しだけ触れることが出来た。

 
 

観察した鳥のリスト

 カワウ、カンムリカイツブリ、アオサギ、コブハクチョウ、マガン、ハイイロガン、カオジロガン、エジプトガン、マガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、カワアイサ、ノスリ、オオバン、バン、ミヤコドリ、タゲリ、ダイシャクシギ、ユリカモメ、カモメ、セグロカモメ、オオカモメ、モリバト、シラコバト、ヨーロッパアオゲラ、ミソサザイ、ヨーロッパカヤクグリ、ヨーロッパコマドリ、ワキアカツグミ、ノハラツグミ、クロウタドリ、シジュウカラ、アオガラ、ハシブトガラ、エナガ、ゴジュウカラ、タンシキバシリ、ニシコクマルガラス、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ホシムクドリ、イエスズメ、ズアオアトリ、ゴシキヒワ

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