ケアンズ・ダーウィン探鳥記 |
雨季のオーストラリア北部はじめじめのうっとうしい天気。
でも、魅力のある鳥も沢山です。
年度末が近づいてくると本業も大詰めをむかえてくる。今回のオーストラリア出張はダーウィンにある研究機関への出張が本来の目的であった。 ダーウィンもケアンズもいずれも2回ずつ訪問したことがある。3月は雨季にあたり、どちらも湿度、気温とも高く、決して鳥を見るには良い時期とは言えない。それでも、時間があるからには少しでも鳥を見たいと思うのがbirder心理なのだろう。フライトの接続が悪く、ケアンズで10時間以上も待ち時間があるため、あらかじめ地元のガイドにコンタクトを取ることにした。 3月2日、関西国際空港でチェックインを済ます。出発ゲートでは学生が多く、卒業旅行シーズンを実感する。不景気のせいで学生の数も減っただろうと思っていたが、そうでもないようだ。相変わらずワーホリ、短期留学をする人もいるようで、色々情報交換をしあう声が聞こえる。ケアンズまでのフライトは混み合っていて、結局睡眠不足のままケアンズに到着。予定よりも少し早く、4時過ぎに着く。案外ケアンズで下りる人は少ないようで、そのままメルボルン、ブリスベンなどの各地のフライトに乗り換える人が足早にtransit counterへ向かっていた。荷物を受け取り、面倒な検疫を済まして外へ出ると、今回の案内人、Phil Gregoryが既に到着していた。
3月3日: Cairns - Mareeba - Mt. Lewis - Julatten - Mareeba - Kuranda - Darwin まだ明けきらない藍色の空を見ながら、まずはMt. Lewisへ。雨季だというのに、Carinsではこの数週間雨がないらしい。異常気象という言葉は好きではないが、3月上旬というのに雨がほとんど降らないというのは明らかにおかしい。それでも乾季とは異なり、やはり蒸し暑い。日が昇ると、次第に青空が広がりだした。異常気象であれなんであれ、やはりオーストラリアの青空を見るのは気持ち良い。 Mt. Lewisの最大の目的は珍鳥Blue-faced Finchである。あらかじめPhilに見たい鳥のリストを送った時、「なんやこれ!むっちゃ難しいな」という反応の中で見られると言った種の一つである。Blue-faced Finchにはこれまで2回挑戦している。いずれもMt. Lewisへ出かけており、残念ながら声も影も見ていない。この仲間はparrotfinchとして広く東南アジアから太平洋諸国に分布しているが、竹や笹の花を主食にしている種が多く、花を求めて広く移動するため、これまで縁がない。Philによれば、Blue-faced Finchは竹も笹も自生しないオーストラリア北部の熱帯林の疎林部で、イネ科の植物の種子を食べるという。Mt. Lewisの入り口で早速PhilがBlue-faced Finchの声を聞いたという。残念ながらこの時には姿は見られなかったが、期待を持つことができそうだ。 山頂までの道はところどころ荒れており、以前2駆の車で苦労して登ったのを思い出した。道路上ではBassian Ground Thrushが餌をあさっている。トラツグミにそっくりだが、嘴が太めで、二周りくらい小さい。 Red-browed Finchの中に少しずんぐりした小鳥を見つける。Philが「いた!」と小さな声で教えてくれる。ジュズダマのようなイネ科の植物のくさむらを入ったり出たりしている緑色の小さな小鳥、間違いない!Philの話によれば、1−3月には比較的見やすいという。しかしながら、他の季節は全く姿を見かけることもないらしい。ホオジロのような、「チッ、チッ」という声を出す以外、地味な習性であり、生態もよく知られていない。 Blue-faced Finchを散々堪能した後、JulattenのKingfisher Parkに立ち寄ることにする。山を降りる途中、Noisy Pittaの幼鳥が道路に飛び出してきた。予想外のボーナスである。Kingfisher Parkは昔立ち寄った懐かしいところだ。オーナーは以前とは違うらしいが、雰囲気はそのままである。Spectacled Monarchが出迎えてくれる。敷地内でキツツキのような鋭い声がする。Buff-breasted Paradise Kingfisherだ。声のする方を探すが、なかなか見つからない。おまけに、何羽かいるらしく、いたる所で声がする。ようやく木陰に止まる個体を見つける。長く白い尾が印象的だ。ストロボを装着して撮影するが、えらく暗い。果たしてどうなったことやら・・・。 Kurandaへ向かう途中、Philが「念のため」とあるピクニックグランドへ立ち寄る。川を渡り、paperbarkの林の奥へ歩いていく。Spangled Drongoが騒いでいるので、「きっといるよ」とのこと。木の枝越しに見つかったのは、Rufous Owl。黄色い眼を開けている。よく見ると、脚になにか掴んでいる。どうやら、ポッサムの仲間らしい。昨晩捕らえた獲物だろう。アオバズクの仲間らしい顔と体型だが、ずっと大きい。長年見逃していた種だけに、これも嬉しい。Philいわく、Rufous Owlは川沿いに見られることが多いそうだ。 途中、パン屋に寄り、遅めの朝食。サッカーボールほどもある大きなパンを売っている。一体誰が買うんだろう・・・。 Kurandaで立ち寄ったのはCassowary House。こちらも馴染みのある宿だったが、昔のオーナーのJohn Squaireは今はリタイヤしており、Philが数年前にイギリスから越して来ている。ここは斜面の上に高床式の建物が建っており、フィーダーにはSpotted Catbird, Macleay's Honeyeaterなどがやってくる。ちょうど繁殖が終わった季節らしく、ベランダの下ではRed-necked Crakeが3羽の雛を連れてやってきていた。クイナの仲間をこうもあっさり見られるのもここならではだろう。Philたちはチーズを主にやっているらしく、ちゃんと餌をもらいにやってくる。しばらく待っていたが、残念ながら、狙いのVicotria's Riflebirdのオスはやってこない。 駐車場の傍でWompoo Fruit-Doveを見つける。近いので、なんとか撮ろうと努力するが、枝が重なり合っていて撮れない。そうこうしているうちに飛んでしまった。Wompoo Fruit-Doveは白っぽい頭部、紫の胸、黄色の下尾筒が印象に残る派手な色彩をした鳥だ。ヒメアオバトの仲間(Fruit-dove)は鮮やかな色彩をした種が多い。さらにしばらく付近を歩いていると、Double-eyed Fig Parrotが見つかった。小型のインコでスズメ程度の大きさしかない。名前の通り、figの木にやってきた。 しばらく森の中でゆっくりとした時間を過ごし、空港へ向かう直前、Southern Cassowaryの親子(写真上)が現われた。バナナのスライスしたものをすごい勢いでバクバク食べている。更に、Philたちがドッグフードをやりだした。まぁ、なにを食べても問題はないんだけど・・・。Cassowaryの雛たちは雛とはいえがっしりしており、走ると「ズン、ズン」と音が響く。 久しぶりのCassowary Houseを出て、空港へ向かう。Philと分かれ、チェックインを済ます。Ansettが倒産し、少し寂れた空港の国内線ターミナルでDarwin行きのフライトに乗り換える。 2時間ちょっとのフライトの後Darwinへ到着。こちらは雨だった。迎えに来てくれた仕事先のJohnに寄ると、今年は雨季が始まったのが遅かったらしく、今ごろ雨が多くなってきているのだそうだ。本来は11月に始まり、5月頃に終わるDarwinの雨季だが、つい数週間前に始まったばかりだという。こちらも異常気象だったそうだ。 この日の夕食は中華のtake awayにVictorian
Bitterで済ませた。 3月4−7日: Darwin - Jabiru JabiruはKakadu国立公園内に位置する小さな町である。Jabiruというのはアメリカ南部に住むコウノトリの一種で、なぜかオーストラリアに住むBlack-necked Storkの通称でもある。Jabiruというのはスペイン語かポルトガル語に語源があるらしく、ポルトガル移民たちが南米、オーストラリアと移動するにつれて言葉もついてきたのではないかと言う人もいる。 Jabiruでの今回の目的はGISに関するもので、7日までみっちり日中は缶詰状態にされた。おかげで日中鳥を身に出かけることはほとんどできなかったが、朝夕の移動途中にPartridge Pigeon, Varied Lorikeetなどを見ることができた。Partridge Pigeonは顔に赤い裸出部のある風変わりな顔をしたハトである。地上で営巣するため、キツネやネコなどによる影響で数を減らしている。Partridge Pigeonはまた、水を飲むために4−5キロも歩いて移動することが知られている。決して飛べない鳥ではなく、なぜ飛ばずに歩いて水場まで移動するのかは知られていない。 Jabiruでは、二晩ほどCrocodile Hotelへ夕食を食べに出かけた。静かでなにもないに等しい町だが、夜の生き物観察は楽しかった。Barking
Owl, Southen Boobookの声があちこちから聞こえ、とりわけBarking
Owlは多かった。Barking Owlの声は犬のようなのだが、あの声を聞いて犬が鳴き交わさなかったところからすると、犬にはちゃんと声の主が分かっていたのだろうか。 Crocodile Hotelの中もだが、夜にはアボリジニの人たちがよく目立つ。もともと遊牧民族である彼らは定住性が薄いようで、野外で過ごす。エアコンの効いたホテルの中は彼らにとっても居心地が良いのかもしれない。アボリジニについて残念なのは、7年前と比較しても彼らの置かれている状況の改善が全く見られないことである。やはり雇用率は低いらしく、例え大学を出てもアボリジニたちに就職先はほとんど用意されていない。彼らはまた政府から補助金のようなものをもらっており、使い道のない(あるいは知らない?)彼らはバーで酒を飲んで日々を過ごす。Crocodile Hotelはそんな彼らの溜まり場になってしまっている。余談だが、Northern Territoryの人たちは他の州の人たちよりも一人当たりのアルコール消費量が多いと聞いた。アボリジニたちの消費量が全体値に貢献しているかどうかまでは定かではない。 Jabiruの街中では街灯の周りの木にRainbow Lorikeetが集団ねぐらを作っている。ただでさえにぎやかな彼らが数十、数百と集まるとそれはもううるさい・・・。Darwinでも繁華街の真中にねぐらを持っていたので、根っからの都市好きなのかもしれない。 4日間の研修と仕事を終え、8日にDarwinに戻ることになった。
3月8−9日: Jabiru - Darwin - 大阪 Jabiru出発7時。朝の空気が心地良い。まだ車の少ないArhnem Highwayでは、鳥や動物たちの姿を多く見ることが出来た。Agile Wallabyはかなり数の多いカンガルーの一種で、道中何回か目にする。道をよたよたと走って横切ったのはエリマキトカゲ。未だにこいつのエリマキを広げているのを見たことがない。Magpie Gooseたちは群れで木の上で休んでいる。ハクチョウとガンの中間のような体型の大きな鳥で、木の上にいるのが妙に不自然だ。 Darwinが近づいてくると、マンゴーの畑が目立つようになった。ここ数年、オーストラリアではマンゴー農場があちこちに出来たという。この他、ドリアン、ジャックフルーツ、ランブータン、パパイヤ、マンゴスチン、スターフルーツなど、まるで東南アジアのように沢山の熱帯性果物が見られる。 Darwinでは車を借りることにした。10時過ぎだというのに日差しはきつく、11時にEast Point Reserveに到着したときには既に照り付ける日差しのせいで、鳥を見るには・・・という状況になっていた。 East Point ReserveはRose-crowned Fruit-doveなど、モンスーン林に見られる鳥を観察するのに良い場所だが、この日はやはりぱっとしない。車を停めて30分ほどして戻ってみると、車の窓が割られており、中の荷物がなくなっていた。一瞬途方に暮れたが、すぐに近くにバックが捨てられていることに気づいた。幸い、パスポートもチケットもあった。無くなっていたのは望遠鏡だけで、とりあえず不幸中の幸いと言えそうだ。(私の望遠鏡はニコンの安物だったので、別に捕られてもあまり痛くも痒くもない)。割れた窓ガラスを掃除しないと運転できないので掃いていると、アカオクロオウムが飛んできた。ここでカメラを出して写真を撮るんだから、我ながら呆れたものである。 レンタカー屋に持っていくと、とりあえず、なにも文句も言わず丁寧に処理してくれた。向こうにしても窓を一枚貼り返る間車が使えないのは損失だろう。修理費を要求されることになったが、これは2万もせず、また海外旅行保険で適用されるので、あまり損失なく済んだ。警察にもとりあえず申告し、盗難届けを提出した。警察の窓口は中国系(しかも、マレーシアかシンガポールからの移民と思われる)で、Darwinが他の町よりも移民が多いというのを実感した。 すっかり鳥を見に行く気も失せ、Darwinの町でぶらぶらと過ごす。夕方、仕事先の人たちと夕食を取る。なぜか回転寿司屋に行き、その後バーで飲みながら、のんびりと過ごした。Darwinは町の中心から住宅街が近く、全て歩いていける距離にあるのが自慢だと彼らは言っていた。長年オーストラリアに関わってきて、初めて嫌な思いもしたが、それでも人間的な生活のできるDarwinの町に住む彼らが少し羨ましくも感じた。 9日のフライトは6時。4時半前に起きて空港へ向かう。Cairnsで乗り換えるまでの間、空港のロビーで外の植樹に来るChestnut-breasted Mannikinを眺めて過ごす。 帰りのフライトもほぼ満席。映画もつまらないので、本ばかり読む。今回は結局あまりゆっくり鳥を見ることが出来ず、見に行けなかった種も沢山あったが、また次回の楽しみにしたい。
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