北部クィーンズランド探鳥記 |
ケアンズでは、乾季はバードウォッチング天国です。
1995年7月の探鳥旅行記のはじまり、はじまり!
−序章 ケアンズ及び、クィーンズランド州北部には以前より行きたいと思っていた。 ただ、オ−ストラリア有数の多雨地帯であること、学生故、休みと重ならなかったことなどにより、今まで行く機会がなかった。 この計画を思いついたのは、イ−スタ−休暇の探鳥旅行で行ったニュ−・サウス・ウェ−ルズ州西部での結果が芳しくなかったからである。同地で前回見逃した Red-lored Whistler, Black Honeyeater, Pied Honeyeater, Supurb Parrot をことごとくはずしてしまい、たまった鬱憤をはらすべく、大出費を覚悟で、クイ−ンズランド州北部へ行くことに決めた。 出掛けるからにはなるべく多くを見たい。そのためにはできるだけ沢山の情報が必要であると、同地を訪れたことのある、東京のK氏、シドニ−の友人たち、更には現地の自然保護団体 North Queensland Naturalists Club などと連絡をとり、見たい種の絞り込みをする。当時わたしは前期試験を控えており、我ながら鳥に対する情熱にあきれ、感心したものである。 NQNCの紹介により、プロのバ−ダ−Andrew Anderson と連絡をとる。彼とのやりとり の結果、7月4、5日に彼に案内を頼むことにする。また、日本の知人及び NQNC の推薦もあり、Kingfisher ParkとCassowary Houseに泊まることを決める。シドニーの友人 は Michaelmas Cay に行くことを勧めていたが、時期が悪いこと、大半の鳥は日本でも見られること(ベンガルアジサシ、ヒメクロアジサシなど一部を除く)、などの理由で、一日を費やすメリットはないと判断する。 結果として、 −7月1日 ケアンズ着13:00。 いつもながら Baggage clam で待たされるのにはうんざりする。30分後、レンタカ−を借りて走り出す。 天気はまずまずでなによりである。1号線に沿って走り20分でEdmontonの集落に出る。ここで左に折れ、Thomsons Roadを東へ走 る。目的の船着き場の途中、 White-breasted Woodswallow, Forest Kingfisher など が電線に止まっている。ダ−ウィンでもそうだったが、乾季になるとカワセミ類は海岸沿いに出てくるようだ。この後 Sacred Kingfisher と共に飽きるほど見ることになる。船着き場の近くに車を止めると、赤褐色の大きな鳥が飛び立った。 Brahminy Kiteである。白い頭とのコントラストが美しい。彼(彼女)は巣作りの最中だったようだ。駐車場裏の大木に巣が見えた。 マングロ−ブの林に入ると、ミツスイたちの声と共に沢山の蚊がやってきた。蚊の襲撃を我慢しながら鳥を探すも、15分で退却。成果は Brown-backed Honeyeaterのみであった。 Tableland は曇りであった。 キンバト、Grey-headed Robin, Little Shrike-thrush に出会うが、声姿共に少ない。あきらめてCassowary Houseへ向かう。 Cassowary House着17:20。 鬱蒼としたRainforestの中に宿はあり、主人のJohn Squireはプロのバ−ダ−であり、この2月に夫婦で日本を訪れたという。根室の高田勝氏が同地を訪れられた縁で、風露荘で泊まったという。 その晩は日本の鳥やオ−ストラリアのの鳥の話、ニュ−ジ−ランドの彼らの子供の話、同宿していたアメリカ人夫婦も交えて、アメリカの鳥や自然保護の話など、話題は尽きなかった。 ジョンは慎重ですばらしいバ−ダ−で、私に色々な情報をくれた。例えば、Atherton Scrubwren と Large-billed Scrubwren の見分け方(前者は高地の林床に住み、嘴が後者よりまっすぐであること、虹彩が後者より大きく見えること、活動がやや鈍いことなど)、Monarchの習性(Pied はTreecreeper のように幹に縦にとまること、White-eared は Gerygone のように樹冠で忙しく動くため、見つけにくいことなど)などで、これらは後に役に立った。 - 7月2日 6:30起床。 まだ外は薄暗い。ダイニングに行くとCassowaryの幼鳥がえさをもらって いた。 ジョンたちはこの日 Mt. Mollyに Great Bowerbirdと White-browed Robinを見に行くという。私はどちらも見ていたので、フィ−ダ−の前で朝食をとりながら、やって来る鳥たちを楽しむことにする。Yellow-spotted, Macleay's Honeyeater, Helmeted Friarbird, Victoria's Riflebird, Spotted Catbird, Black Butcherbird などがひっきりなしにやって来る。それぞれ好みがあるようで、ミツスイ3種は砂糖水のみ、Riflebirdはバタ−と果物、Butcherbirdは果物と肉、Catbirdは果物飲みにやって来た。 地上の茂みからはRed-necked Crakeが現れ、台所の裏で餌をあさって、また藪へ戻っていった。キンバトと Musky Rat-Kangaroo も台所の裏で黙々と餌を取っている。 Cassowary House の近くの径を歩いてみる。 Pale-yellow Robin, Yellow-eyed Cuckoo-shrike, Large-billed Scrubwren が顔を出す。川沿いの林から、賑やかな鳥たちの声が聞こえる。Brown Gerygone に混じって、Yellow-breasted Boatbillが姿を見せる。雄はキビタキを思い出させる配色で美しい。非常に小さな鳥で、動きもヒタキよりもムシクイのようである。Spectacled Monarch もこの群れの中にいた。声はいまひとつだが、姿はやはりかわいらしい。Rufous Fantail と共に行動し、これもまた 落ち着かない忙しい鳥である。 Cassowary House を後にし、Craterに向かう。 途中何か所か立ち寄るも成果は芳しくない。 Lake Tinaroo Roadで Sarus Crane を追加した程度である。 CraterではGolden Bowerbird, Tooth-billed Catbird, Bridled Honeyeater など楽しみにしている種が何種かいるはずである。 勢いこんで車を降り、trackを歩き出す。 しかしながら、出てくるのは普通種ばかり。 Mountain Thornbill を見れた程度であった。 写真を撮るために一旦 Cassowary Houseへ戻る。日中は鳥の数は少ないと聞いていたが、それでも Honeyeater 3種、Victoria's Riflebird などが姿を見せた。私が餌台の前で鳥を待っていると、ジョンたちが帰ってきた。彼らは、Busturd, GreatBowerbird, White-browed Robin, Black-throated Finchなどを見てきたという。成果 の乏しかった私には少しうらやましく聞こえた。ジョンたちと別れ、Cassowary Houseの周囲を再度散歩する。朝 Yellow-breasted Boatbill たちのいた沢では Pied MonarchとWhite-eared Monarch が水浴びをしていた。Pied Monarch は本当に変わったヒタキである。幹に縦に止まって、らせん状に上っていく。2羽の Monarch はひとしきり水を浴びた後、森に消えていった。 Julatten への道は主に乾燥した林が続いており、 Red Goshawkが住んでいそうな雰囲気がある。 Julatten 着5:15。 荷物を部屋に入れ、早速付近を散歩する。Kingfisher Park にもCassowary House 同様に餌台がある。ここでは Yellow-spotted, Graceful, Lewin's Macleay's, Blue-faced, Yellow Honeyeater, Bar-shouldered Dove, Vicoria's RifleBird(雌のみ)などが姿を見せた。Yellow-bellied Sunbird はゲ−トの近くの木 で盛んに蜜を吸っていた。ここの主人のGeoff と Sandra もバ−ダ−であり、彼らにMt. Lewis のポイントを教えてもらった。夕食をとった後、懐中電灯を借りて森を歩いてみる。 Sandra いわく、フクロウ類は繁殖期に入ったため、期待はできないとのことだったが、2時間歩いて、Red-legged Pademelon, Agile Wallaby, Northern Brown Bandicoot, Long-nosed Bandicoot の有袋類だけというのにはがっかりした。 9:30頃、ヒステリックな口笛のような声を部屋の裏で聞く。ベッドから飛び起き、ライトを照らす。確率は2分の1−つまり Barn Owl か目指す Lesser-Sooty Owl かである。しかも環境を考えると、後者である率が極めて高い。ライトの影で1回だけ飛んで、その後は声が遠くなってしまった。 翌日サンドラたちに Lesser-Sooty Owl の声であったことを告げられ、非常に残念に思った。 2週間ぶりの声だったそうである。 - 7月3日 今日は昨日と違い少し風が強い。Mt. Lewis ではこのことが見事に災いした。強風のため、樹冠の鳥はまったく見えないうえ、やたらに寒い。 標高1000mを越しているからだろうか。林床部では Chowchilla, Fernwren, Atherton Scrubwren といった少し普通と違った面々がガサゴソと餌をあさっている。 Chowchilla といい、もっと南で見られ る Logrunner といい、体の大きさの割りに大きな足で土を掘る。 どちらも雌が派手な オレンジ色の喉を持っている。結局、ここでも目指す Golden Bowerbird, Tooth-billed Catbird には会えなかった。山を下りる途中、Chestunut-breasted Mannikin, Pied Monarch, Northern Fantail らを見かける。 Northern Fantail は他のオウギヒタキたちと異なり、静かにじっと枝先 に止まっていることが多く、むしろヒタキ類に似る。Kingfisher Park に戻り、成果を報告、今度はMt. Carbine 近郊のノガンのポイントを教えてもらう。20羽前後いるということなので、意気揚々と出掛ける。East Mary Road という農道の脇の畑に、なるほど5羽の Australian Busturd がいた。ツルとい うよりも、クイナの大型版といった感じの非常にゆったりとした動きで、のんびりと餌をとっていた。 しかしながらこの日は4種しか増えず、翌日以降に大きく負担を残した。 また夜の探鳥もおどろおどろしい声のBush Thick-knee を見たくらいで、フクロウはなし、有袋類も極わずかであった。 - 7月4日 アンディこと Andrew Anderson は時間より少し遅れてやってきた。 4WDでやって来るものと思っていた私は、彼のニッサン・ブル−バ−ド 1984年式を見た時、少し不安 になった。彼いわく、「2WDでいけないところはキンバリ−、 Great Victorian Desert そしてエア−ズ・ロックの西くらいさ」ということであったが、彼のブル−バ−ドはそれを差し引いてもまだまだ恐ろしい車だった。まず、ライトはボンネットを開けて直接コ−ドをつながないとつかない。ドアにいたっては、何回も引かないと開かない。だからガソリンスタンドでも二人でガチャガチャやって、「う〜ん、あかねぇなあ」とのんびり言う次第。この男、本当に大丈夫なン? 彼が実力を発揮したのは5時間後であった。Windmill Creek に到着して20分で珍鳥 Golden-shouldered Parrot を見つけたのである。 この鳥は家畜の増え過ぎによる砂漠 化と、その美しさゆえ、密猟の対象になってきたため、現在では絶滅危惧種として国を挙げて保護している。 しかしながら今でも密猟は絶えず、アメリカあたりではペアでおよそ7万ドルするという。 稀少性がもたらした悲劇である。彼はその後も2時間余りの滞在時間中に、 Red-browed Pardarote, Black-backed Butcherbird などをみつけた。 どちらもケアンズ近郊ではみられない。 彼は昨年12月、NHKの取材陣と俳優のY.H.氏一家を案内したのだそうだ。 番組の内容は私は知らないが、彼いわく、 Bowerbird
4種と Victoria's Riflebird を取材して帰ったという。 さすがNHKと思ったのは、すべての種の繁殖活動を記録して帰ったということと、2年間に渡り、取材をしていたということである。彼と私を乗せたブル−バ−ドが Kingfisher Park
に着いたのは、夜の7時半。 ケア ンズには9時を少し回っていた。
続いて Papuan Frogmouth を見に行く。住宅地の脇に車を止め、薄暗い住宅の植木に3羽が止まっているのを観察する。 まず何よりも大きい。 同属の Tawny Frogmouthよりも大きいだろう。こんな大きな鳥がよく住宅地に住めるもんである。 次は Little Kingfisher を見に Botanic Garden へ行く。 Centenary Lake の周りにまだ人は少ない。 案の定、池の反対側の木に止まっている姿を見つける。 天気のせいで色があまりよく見えない。アンディはふざけて「新種だぁ 」と言い出す。 Thomsons Road は2回目の挑戦となった。今回は虫よけをたっぷりと塗る。マングロ−ブの中に入ると、アンディは Mangrove Robin を呼び始めた。 川面を Azure やLittle Kingfisher が飛ぶ。30分たってあきらめかけた時、不意に姿を現した。 濃い灰色で地味ではあるが、やはりヒタキ類特有のかわいらしさがある。その後、Varied Honeyeater, Rufous Owl, Rose-crowned Fruit-dove と立て続けに3 種はずす。 ケアンズのEsplanade で John Crowhaust と出会う。 彼は市に雇われて、毎朝公園を清掃しているという。彼もよく知られたプロのバ−ダ−で、早速アンディが昨日の RedGoshawk と Golden-shouldered Parrot の話をする。 いずこも同じである。 昼食後、 Tableland へ登る。Lake Tinaroo Road も2回目となった。前回見逃し た Black-throated Finch を捜す。牧柵に止まる Lemon-bellied Flycatcher を見つけるも肝心の鳥はなかなか見つからない。 日没30分前、ようやく小さな群れを見つける。ナンキンオシは時間切れで他日に回す。 6時にケアンズに戻り、少し世間話をした後、「オレも Blakiston's Fish Owl を見に行 くからなぁ」と本気とも冗談ともわからない言葉を残し、アンディはブル−バ−ドに乗り込み、夜の街へ消えていった。
- 7月7日 森の中はまだ寒く、鳥の声も多くない。 Chowchilla, Large-billed Scrubwren, Grey-headed Robin などなじみの鳥が出没する。11時、冷えた体を温めるため、cottageへ立ち寄る。デボンシア・ティ−を注文し、カメラと双眼鏡を持って席に着く。 庭のアカシアの花で White-cheeked Honeyeater が蜜を捜しているのが見える。本来は海岸性の鳥のはずなのに、なぜこんな高標高地にいるのだろう。 お茶とスコ−ンが運ばれてきた。 そうすると、どこからか Macleay's Honeyeater が1羽やってきた。彼は私の席の向かいに座り、しばらく私がスコ−ンを食べるのを眺めていた。そこで思いつきでジャムをスプ−ンに少し乗せて、差し出してみた。 すると彼は何のためらいもなく、すぐに食べてしまった。その後、6羽の Macleay's Honeyeater が同時にやって来て、スプ−ンを差し出すまでもなく、勝手にスコ−ンをつついたり、ジャムをなめたりしていた。 また Victoria's Riflebird の雌も1羽、クリ−ムを食べ、椅子の背もたれで嘴を拭きだす。 さらにはBrush Turkey, Pied Currawang といった大型の鳥までやって来て、机の上に乗る始末。「慣れてる」を通り越したすばらしい?所である。 ちなみに雄の Riflebird もやって 来るそうなので、興味のある方はぜひ行かれるべし。Paluma Gallery のご主人は土地に詳しいバ−ダ−である。ギャラリ−でダムへ行く ことを勧められる。15km ほど走って、ダムの脇に出る。 付近は素晴らしい rainforest である。途中 で Bower's Shrike-thrush が道路を横切る。Little, Scaley-breasted Lorikeet が飛びかう。 林道の分岐で車を止め、White-eared Monarch や Rufous Fantail を探していると、手前の藪から、黄色い鳥が出てきた。 まさかと見たら、何とそのまさかのGoldenBowerbird 雄であった。黄色には光沢があり、天気が悪いのに光って見える。 後頭部にはオリ−ブ褐色の冠羽があり、繁殖期のディスプレイで使われるのであろう。 わずか数分であったが、じっくりと観察することができた。疲れと満足感からこの夜予定していた探鳥を中止する。
最後の最後にMisson Beachの近くで Fruit-pigeon
をねらうことに決める。 途中の道を飛ばし、9時半過ぎに現地に到着、霧雨の中歩き始める。Wompooの声はたくさん聞こえるが、姿は見えない。他の2種に至っては声もしない。Spectacled
Monarchのみ目立ったが、あまり成果のない1時間半であった。午後1時半、ブリスベン行きの飛行機に乗り込む。思えば、Tシャツ一枚買わず、アトラクションのひとつも参加せず、鳥、鳥、鳥、に明け暮れた一週間だった。 来週からはまた勉強のみの日々が待っている、そう思うと少し憂鬱になった。 |
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