ブータン探鳥記

ブータン探鳥記春 2012年3月31-4月8日 


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ビルマキヌバネドリのメス© 2012 Koji TAGI

 ブータンの渡航も今回で5回目。これまで観察した種も160種ほどになり、そろそろリストも簡単に増えなくなってきた。ブータンで鳥を見たことのある人の探鳥記や、ブータンでバードウォッチングガイドをする人に聞くと、必ず言われるのが、「バードウォッチングをするなら、東部のSengor、南部のShemgang」。

 とはいえ、私が仕事をしているPhobjikhaはブータンの西部に位置していて、何か用事がない限り、東部に足を延ばすことはかなわない。おまけに、ブータンの道路は四国や九州山中の林道よろしく、道が狭い上にカーブが多い。ブータンの面積はせいぜい九州並みで、首都のThimphuから東部の中心都市Tashigangまで行っても距離はたかだか400kmちょっと。でも、自動車の平均時速が30km/hにしかすぎないこの国では、ThimphuからTashigangまでは、車で二日間がかりである。私がその訪問を切望するSengorはMongar県に位置し、Thimphuからの距離は300kmを超えている。
 今回もその訪問を期待していなかったが、ひょんなことからSengorの手前のJakarまで仕事で行かなければならなくなった。プロジェクトの良き理解者である森林公園局のKarma Tshering氏がJakarで地域主体のホームステイプログラムが行われているということを伝えてくれた。これは行かねばなるまい。早速、4月4−8日でThimphu - Wandue Phodorang - Pele La - Trongsa - Yutong La - Jakar (Bumthang) - Sengorを往復する計画を立てた。その時はこれまで経験したことのない、波乱に富んだ旅行になるとは知らずに・・・。


3月31日(土)Thimphu - Dochu La

 東部ブータンに行く通行許可書が予定よりも早く手に入ったため、週末をThimphuで過ごすのではなく、Dochu La峠に出かけることにした。Dochu La峠はRoyal Botanical Parkという、森林公園局が管理する保護区内にあり、標高3,115mの峠を越えた東側には豊かな温帯広葉樹林が広がる。

 朝7時前にThimphu市内のホテルを出発し、Dochu La峠には8時前に到着。シャクナゲの仲間のRhododendron arboreumの深紅や濃い桃色の花が目に飛び込んでくる。Royal Botanical Park内にあるLumperi Parkに到着し、さっそく公園内を散策。3月20日頃にレッサーパンダが日中撮影されたという池のそばでBlue-fronted Redstart(ルリビタイジョウビタキ:写真右)のオスを発見。すでにおなじみの鳥だが、瑠璃色の上面とオレンジ色の下面のコントラストが美しく、見ていて飽きない鳥だ。続いて、Great Barbet(オオゴシキドリ)が予想外に低いところにいるのを見つけるが、カメラ操作にまごついている間に飛ばれてしまった。その後は、Verditer Flycatcher(ロクショウヒタキ)が出たり、bush robin(ルリビタキの仲間)の声を聞いたが、季節の割にぱっとしない。

 Karma氏が手をまわしていてくれたらしく、途中から公園のスタッフが案内してくれた。Brown Parrotbill(ヒマラヤダルマエナガ)を見た後、Lumperi Parkの外にあるトレイルを散策することにした。トレイル内も静かではあったが、Blyth’s Leaf Warbler(ヒマラヤムシクイ)がさえずり、山麓から上がってきたのか、Rufous-gorgeted Flycatcher(ノドグロヒタキ:写真ページトップ左上)のオスを見かけたり、春を感じさせる。沢沿いで何か飛び立ったと思ったら、どうやらforktail(エンビシキチョウ)の仲間らしい。残念ながら、姿を見ることはかなわなかった。

 さらに森の中を歩き、別の沢に出た時、今度は飛ばさずに2羽のforktailを見つけることができた。Spotted Forktail(セボシエンビシキチョウ:写真左上)である。大型のエンビシキチョウで、長い尾を含めると体長は25cmほどもある。白と黒のツートンカラーだが、黒い背中にその名の通り白い斑点があって美しく、この仲間で最も見たかった鳥だ。ようやく、今シーズン初のライファーとなる鳥を見て気分を良くした後、さらに思いがけない出会いがあった。森の中で地上を走る影を見つけたが、キジの仲間にしてはずいぶん小さい。双眼鏡でのぞくと、Hill Partridge(アカガシラミヤマテッケイ)だ。いつも、谷の奥から聞こえる声だけで、観察は難しいと言われていた鳥だけに、予想外の出会いに感激した。この日の締めくくりはDarjeeling Woodpecker(キバラアカゲラ:写真右)。アカゲラよりもオオアカゲラのメスによく似た鳥で、腹よりも襟の黄褐色がよく目立つ。トレイルから道路に出る手前で巣穴掘りに忙しいオスを見つけたが、10分余りのんびりと観察させてもらった。
 

 4月4日(水) Thimphu - Wandue Phodorang - Nubding - Pele La - Tshangkha - Trongsa
 
 Thimphu出発は7時。前日までにガイドのTshewangを確保し、車両も手配し、準備は万端。調査業務と週末の休暇を兼ねて、東部で向けて出発。この日の宿泊先はTrongsaで、約8時間の道程。順調に行けば夕方4時にはTrongsaの町に着くが、道中鳥を見ながらなので、せいぜい6時であろう。

 道路拡幅工事の進むDochu La峠を通り過ぎ、集団移転の済んだWandue Phodorangの町を抜け、昼過ぎに車は谷沿いの道をPele Laに向け、ゆっくりと上がり始めた。最初に車を止めたのはNubdingの手前。Tshewangがテープを流すと、すぐに谷間から声が聞こえてきた。初めて聞くWard’s Trogon(ビルマキヌバネドリ:写真右)の声だ。「ファ、ファ、ファ、ファ、ファ、ファ・・・」という良く通る声が複数聞こえてきたと思ったら、谷から大きな尾の長い鳥が飛んできた。ブータン探鳥のハイライトともいうべき、Ward’s Trogonをようやく双眼鏡に入れることができた。見られる時というのは、えてしてアッサリ見られるものである。

 視界に飛び込んできたのは、眉と腹の黄色いメス。なおもテープを流し続けると、さらに近寄ってきた。どうやら一羽ではなく、複数いるようだ。双眼鏡で見渡してみると、なんと4羽もいる。しかし、いずれも腹が黄色いメスばかりだ。キヌバネドリの仲間はたまに複数が小さな群れを形成して行動を共にすることがあるが、メスばかりの群れというのはこれまで見たことがない。キヌバネドリたちは時折、「ケケケケッ」という警戒声を出しながらも近寄ってきて、最大接近は5mを切った。大きさはハトよりも大きな35cmほどある鳥だから、もはや双眼鏡は必要なく、カメラでも飽きるほどに撮影することができた。キヌバネドリを観察している最中にMaroon Oriole(ヒゴロモ)のオスが通りかかり、Rufous-gorgeted Flycatcherのオスが何度か木陰から姿を現した。
 
 Ward’s Trogonはずっと見たかった鳥なのでかなり満足度が上がったが、Nubdingを過ぎたところで今度は大型の猛禽類が群れで飛翔しているのに出くわした。Tshewangは「Himalayan Griffon(ヒマラヤハゲワシ:写真左上)だ」と小さな声でつぶやいた。大型のハゲワシで、体長は1.2m、翼長は2mを超える。急峻なブータンの山並みをバックに群れ飛ぶヒマラヤハゲワシというのは、なんとも雄大な景色で良い。これで晴れていればなお良いのだが・・・。遠かったハゲワシたちの群れが次第に近付いてきて、数百メートル離れた崖上に降り立った。よく双眼鏡で見てみると、すでに何羽かが木の上に降りている。カメラを抱えて近寄っていっても逃げる様子がない。曇った空がバックの最悪の条件下ではあったが、何枚か写真を撮らせてもらえた。
 
 Ward’s TrogonとGriffonで時間を使いすぎたのか、昼食を取るにはすっかり遅い時間になってしまった。Pele Laでの探鳥をあきらめ、食堂のある町まで向かう。標高3,390mのPele Laはいつも天気が悪く、今回も曇っている上で小雨が降っていて、鳥を見られる状況ではない。ドライバーのKinleyがいつも以上に飛ばしている。えらく車が揺れると思ったら、時速は60km/hを超えていた。

 峠を下り、午後2時半に遅い昼食を取る。食事を取った後、車は徐々に標高を下げ、Jigme Singye Wangchuk National Parkへ。この国立公園は通称”Black Mountains”と呼ばれ、深い森と谷に恵まれた豊かな国立公園である。道路沿いで車を止めると、さっそくHill Partridgeの声が聞こえてくる。高いハイピッチの声は何の声だろうか、TshewangはBeautiful Nuthatch(ビナンゴジュウカラ)の声に似ていると言うが、聞いているよりも少し標高が高いように思う。道路際でぴょんぴょん跳ねている鳥を双眼鏡に入れてみると、地味ながらかわいらしい姿のBhutan Laughingthrush(ムナフガビチョウ:写真右上)。一心不乱に虫を探している。すぐ近くでは、Hodgson’s Redstart(ハイバネジョウビタキ)のメスが石の上でたたずんでいる。11月に見た時と比べ、ずいぶん灰色っぽくなっているが、繁殖期に向けて羽が摩耗した結果だろうか。小雨が降り始めたので、移動。次に止まったポイントで、Chestnut-tailed Minla(ノドジマコバシチメドリ)、Striated Laughingthrush(シロスジガビチョウ:写真左)などを観察。草地で何かよく分からない小鳥がいるので、双眼鏡を向けると、喉の青だけ目立つ。すぐに、崖下に飛び去ってしまったが、大きさがスズメ大であること、眉斑があること、喉以外の上面は褐色であったことから、オガワコマドリのオスとすぐに判明した。ブータンでは珍しい鳥のようだ。
 
 その後、道路際のYellow-billed Blue Magpie(キバシサンジャク:写真右下)を撮影したりしながら、予定よりも2時間ほど遅れて、5時半前にTrongsaまで後15キロと迫ったところで、突然前に車の列ができていた。「道路封鎖は午後5時には開くはずなのに、おかしい」とドライバーのKinley。野次馬根性の強いブータンの人たちは、こういうときに皆で集まってワイワイガヤガヤ、賑やかになる。どうやら、工事現場で落石があり、岩の撤去に時間がかかっているらしい。焦っても仕方がないので、のんびり谷を見ていると、Nepal House Martin(ノドグロイワツバメ)が飛んでいる。反対側の谷に見える道はShemgangに向かう道。あの道をずっと下って行った先では、Rufous-necked Hornbill(ナナミゾサイチョウ)やビナンゴジュウカラが見られるのだそうだ。さらには、BBCが撮影していたような、トラも生息しているという。
 岩の撤去は長引き、とうとう日が暮れてしまった。時計はすでに7時を回っている。半日以上車に乗っていたため、体はくたくた。さっさとホテルに泊まって、ゆっくり疲れを落としたい。しかし、そんなこちらの思惑とは別に、岩の撤去は遅々として進まない。外ではMountain Scops Owl(タイワンコノハズク)の声が聞こえ始めた。
 2度ほど発破する音が聞こえものの、作業は思うようにはかどっていないらしい。待たされている車の数はどんどん増え、現場を見に行く野次馬が車の前を行ったり来たりしている。ようやく岩の撤去が終わったのは午後9時を過ぎた頃。Trongsaの町までは工事現場からわずかに30分ほどで、9時半過ぎにホテルに到着。Yangkil Resort。Trongsaでは最も古いホテルらしいが、リノベーションをしたのか、ホテルの内装は驚くほどきれいで、スタッフの対応も良い。翌日は5時半出発のため、食事を済ませ、風呂に入ってさっさとベッドに入った。部屋の外ではヨタカやタイワンコノハズクが遠くで鳴いていた。
 


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