タビンの探鳥記


まだまだ知名度は低いものの、
レアモノ満載のタビン
2005年の探鳥記です

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タビンの夜明け © 2007 Koji TAGI


 

4月15日

 妻の一時帰国に伴い、週末の時間つぶしに前々から気になっていたタビンへの訪問を決めた。「食事がまずい」、「藪が茂っていて鳥が見づらい」、「ガイドの質が低い」という、とんでもない評判しか聞かなかったため、どうにも行く気が起きなかったのだが、協力隊員で野生生物局在勤のT君の任期が間もなく切れることもあり、タビンに行く機会もなくなりそうだ。とりあえず、行くだけ行ってみることにした。

 タビンへはLahad Datuから入るのが一般的である。眠い目を擦りつつ、コタキナバル6時55分発の便に乗り込む。平日なのに、機内は空席が目立つ。空港では、タビン・リゾートのスタッフが出迎えに来てくれていた。タビンまでは約1時間半の道のり。30分ほど舗装道路を走った後、アブラヤシプランテーションの中の未舗装路に入る。

 タビン着は9時半過ぎ。スタッフから説明を受けた後、部屋に通される。なんだか、ゴキブリホイホイみたいな、ちょっと冴えない外観のシャレーだが、中は結構綺麗。天井も高く、オーク色の木目が落ち着いた雰囲気。川に面していて、涼しげだ。

 時計を見るとまだ10時。部屋にこもっていても仕方が無いので、早速道具を取り出し、探索に出かける。タビンは基本的に二次林で、ダナムに見られるそびえ立つような木々はない。

 貯水タンクのそばでChestnut-breasted Malkoha(チャムネバンケンモドキ)を見つける。のんびりと日光浴をしているのを邪魔してしまったようだ。遠くで口笛のような声で鳴いているのはBlack-headed Pitta(クロアカヤイロチョウ)。まず見られないだろうと思いつつ、口笛で真似てみる。林縁に突然鳩くらいの赤い鳥が飛んできて、5mくらいのところに止まった。キヌバネドリだ。双眼鏡で見てみると、目の周囲の紫色が目立つ。Diard's Trogon(バラエリキヌバネドリ)のオスである。こんな明るいところに止まって全身を見られるのは珍しい。ビデオ、ビデオと、相当慌てたのだが、向こうも慌てたらしい。すぐに飛んで行ってしまった。

 ヤイロチョウの声が少しずつ近づいてきていたので、引き続き口笛で真似ていると、ガサッという物音と共に、赤い腹の目立つ丸っこい鳥が藪から飛び出した。おおっ、クロアカヤイロチョウ(写真左)だ!すぐに藪の中に飛び込んでしまったが、昨年ダナムで何回も煮え湯を飲まされてきただけに、感動である。

 飛ぶところだけながら、見えたのに気を良くして、さらに粘っていると、先ほどとは別の個体が目の前の藪で鳴き始めた。足元の枯れ葉に気を配りながらゆっくりと近づくと、落ち葉の間に赤い腹と水色の眉斑が目立つずんぐりした小鳥がいた。「あれ、見つかった?」という顔をしてすぐに藪に隠れたが、しばらく待っていると、少し離れた倒木の上に姿を現した。背から肩羽が紫色で、肩が少し青い。お腹は目が覚めるような赤である。うーん、めっちゃ綺麗や。それにしても、警戒心が強く、動きが素早い。ほとんど物音を立てずに気がつくと5m以上も離れた別のところにいる。ついつい、夢中になって、追いかけてしまったが、こんなことをするヤツがいるから、次から警戒して余計に見づらくなるんだろうなぁ。

 ヤイロチョウを見た藪の中で首を前後に振りながら忙しく歩いているのは、Black-capped Babbler(ズグロジチメドリ)。落ち葉を引っかきながら、餌を探している。チメドリの仲間は藪の中が好きな鳥が多いが基本的には樹上性だ。この鳥のように、地上を主たる生活の場としている種は案外少ない。

 早速見たかった鳥を見られ、機嫌良く昼食を取る。うーん、飯は確かにいまいちやなぁ。魚のから揚げにはうろこがいっぱい付いているやん!

 昼食後、部屋の外を眺めると、ブタオザルとカニクイザルが川に下りていた。「部屋の外に何も置かないようにしないと、サルがいたずらするからね」と繰り返し言われたのだが、これだけいると確かにちょっと嫌である。カニクイザルは人(?)相が悪く可愛げがないものの、小柄な体格なので、引っ掻かれても最後には勝てそうな気がするが、ブタオザルのおとっつあんはマッチョな体型に加え、如何にも強そうなドスの利いた顔をしている。こんなのと戦っても勝てる自身はないので、大人しく荷物は部屋の中に入れておくことにした。

 サルたちが立ち去った後、川にはWhite-crowned Shama(シラガシキチョウ)が下りてきていた。早朝と夕方によく鳴く鳥だが、日中はぼーっとしているのか、あまり動かない。そこで、望遠鏡を取り出し、デジスコ撮影に挑戦。ビデオを取り付けると、うわっ、全身画面いっぱいになりよるワ。倒木のそばのアリをしばらく眺めていたのだが、そのうちアリ浴びを始めた。

 3時を過ぎ、少し日が陰って来たので、再びヤイロチョウ探し。繁殖期なのか、日中だというのに、3羽が盛んに鳴いている。先ほどとは違う場所だが、一羽見えそうな距離で鳴いていたので、藪の中に進入。蔓の隙間から、赤いお腹を発見。地面をほじくって何か餌を探している様子だったが、こちらに気がついて見えないところに隠れてしまった。

 ヤイロチョウのいた場所から少し離れたところにウズラが5羽しゃがんでいるのを見つける。Chestnut-necklaced Partridge(クリチャミヤマテッケイ)だ。赤茶色の首輪がはっきりしている。これは予想外のボーナスである。

 4時からリゾートでアレンジしてくれたエクスカーションに参加する。マッド・ボルケーノ(写真)に行くらしい。トラックの荷台に板を敷いただけだが、風が気持ち良い。途中でBushy-crested Hornbill(ムジサイチョウ)に出会った。

 マッド・ボルケーノではこれといった収穫はなし。ガイドのお兄ちゃんとしばし談笑。彼はガイドをする前は銀行で働いていたらしい。タビン・リゾートでも本来は事務のつもりで申し込んだのに、ガイドをすることになったんだそうな。ただ、今ではその仕事を楽しんでいるとは言っていたが。

 マッド・ボルケーノから道路に戻る途中、ジャワマメジカがトレイルを走って横切った。大きな得体の知れない声の主はホエジカだそうだ。

 6時に一旦部屋に戻り、シャワーを浴びてから休んでいると、協力隊員のT君が部屋を訪ねてきた。今まで仕事をしていたらしい。アオヒタキ類の写真を持ってきてくれたのだが、標識調査での写真で見てみると、野外では分からない違いに気がつくこともあるもんであある。まず、マレーヒメアオヒタキのオスは胸まで青いので、他の種との違いは明瞭。ただ、稀にメスで見られるオレンジ色の胸の個体はボルネオヒメアオヒタキ等、他種との識別に注意が必要。ボルネオヒメアオヒタキは他の種と比べ、眉斑が薄い光沢のある青で、胸のオレンジ褐色はやや鈍い色をしている。Large-billed Blue Flycatcher(クロアゴヒメアオヒタキ)は嘴がその名の通りやや長く、虹彩が褐色である。眼が少し嘴から離れた位置についているため、やや間延びした顔をしている。マングローブヒメアオヒタキは前種に似るが、前種よりも引き締まった顔をしている。

 晩飯を食べて、ナイトドライブに参加する。こういうものは得てして期待外れで終わることが多いと思うのだが、ベンガルヤマネコ3、スローロリス1、オオアカムササビ1など、数は少ないものの、それなりに見られて楽しめた。特に、スローロリスは大きな眼にゆっくりとしたユニークな動きがとても印象に残った。

ナイトドライブが終わる頃には気温も下がり、長袖でないと寒いくらいに。半袖しか持ってこなかったので、すっかり体が冷えてしまった。


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