ダナム・バレー探鳥記3


ダナム・バレーもいよいよ3回目
果たしていつまでヤイロチョウたちに
振られ続けるのか・・・。

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雨季のダナム・バレー
 
© 2007 Koji TAGI


 

 私が住むコタキナバルは小さな街の中に一通り揃っており、選択肢が少ないことに不満を持たなければ それなりに住みやすい街である。難点は自分の趣味のバードウォッチングをする上で適当な環境が少ないことだ。キナバル山は車で1時間15分ほどのところにある気軽に行ける探鳥地だが、鳥のバラエテ ィーが少なく、毎週のように通う気はしない。なにより、熱帯性の鳥を最もよく見られる平地の森が全く残っていないのが物足りない。9月にスカウに出かけたものの、ボートからの鳥見は楽な反面、見られる種類が限定されてしまう。9月上旬に知人がダナム・バレーに行った際にBlue-headed Pitta, Garnet (Black-headed) Pitta, Bornean Bristlehead, Cinnamon-rumped Trogonなど、珍しい鳥たちを見て帰ってきたことに刺激され、雨季に入る前にダナム・バレーを再訪することに決めた。

2004年10月1日

 寝ぼけ眼の妻と共に、6時55分発のMH2086便に乗り込む。

 Lahad Datu着7時50分。前回訪ねた香香板麺に足を向ける。店の看板を見てみて、ふと気がついた。家の近くのLyntasにある店の看板と同 じだ。なんだ、チェーンなんや。「板麺二つね」と頼んで、出てきたのを見て、妻と顔を見合わせた。 紙をビリビリとちぎったような形の麺がスープの中に入っていたのである。具も以前とは違うようだ。 「あれ、板麺とちゃうんちゃう?」、「切ってあるんかな?」。豚の肝が入ってある板麺を食べたがって いた妻は不満そう。なんで同じように頼んで違うもんが出てくるんやろ?サンバルをたっぷりと入れて、 「か、辛い!食べられない!」と妻が涙目で文句を言う。前回もサンバルを入れて、めっちゃ辛くしたのに、学習せーへんやっちゃ・・・。

 雑貨屋で水を買い、Borneo Nature Toursの事務所に戻る。空港の周りは何もないから、出発まで時間を持て余してしまう。 9時半の出発なのに、なかなか出発しない。Borneo Nature Toursのスタッフに確認すると、もう一組くるはずの客が来ないとのこと。出発時間になんの連絡もよこさずに遅れてくるのは白人やろなー、と いう話をしながら待っていたが、一向に来る様子もない。10時前になって、やむなく出発。今回は30人乗りのバスで行くらしい。バスは遅そうだから嫌やなぁ・・・。

 バスには私たち夫婦と休暇を取ってい たというガイド1名以外は誰もおらず、貸切状態。早起きの苦手な妻は早々に夢の中。退屈しのぎにガイドと話をする。彼はTanbunanの出身だとか。ローカルではないんやね。

 予想通り、2時間40分もかかってようやくBorneo Rainforest Lodgeに到着。3回目ともなると、見知った顔が多い。「あれ、また来たんか?」とあちこちで聞かれる。妻が「いいね、友達多くて」と一言。 うーん、友達ちゃうねんけどなぁ。

  ガイドのワンコンとは昼食前の顔を合わす。川谷拓三と辻本茂雄(大阪人しか知らんかなぁ)を足して割ったような雰囲気だ。知人 のU氏から聞いていた通り、かなり人見知りをする性格らしい。あまり多くは話さないが、こちらが見たい鳥のリストを手渡した時、「全部二日で見るつもりか?特に見たいものを教えてくれ」と聞いてきたことから、プロ意識を感じさせられた。

 「午後は大抵雨だよ」とワンコンが言った通り、3時から土砂降りになった。ホールのソファーに座っていても雨が降り込んで来るほど強い雨だ。1時間半ほど降った後、ようやく小止みになった。イギリス人のバードウォッチャー二人は、ガイドが渋るので二人で行ってくると、折畳みの傘を持って出かけた。

 ワンコンに「そろそろ行かないか」と促すと、「雨の後は概して、良くない」とあまり乗り気ではない様子。我がままなガイドやん。日没まで間がないので、ロッジの周辺を歩くことになった。

 U氏曰く、「彼は目が良いよ」 とのことだったが、それが判明するまでさほど時間はかからなかった。ロッジの敷地の外れから川沿い に出て、「Lesser Fish-Eagle(コウオクイワシ)がいるよ」と100mくらい離れた木の枝の陰で休むワシをいきなり見つけた。たぶん、近辺にいるのを知っていたのだろうが、普通は見落とすような遠くの藪陰の個体を見つけ てみせたので、ちょっと期待が高まった。今回はヤイロチョウの仲間を見せてもらえるかな。

 川原ではサンバー(シカ)のメスが草を食んでいた。胸に傷らしきものが見えるが、ヒルにでも食われたのだろうか?

夕方の1時間半の散策はさほどたいした成果もなく終了。夜には再び雨が降り始め、早 めに就寝。


10月2日

 雨は降っていないものの、鬱陶しい空模様。ダナム・バレーで朝晴れていなかったのは初めてだ。気温があま り上がらないので歩くには楽そうだ。

 天気のせいなのか、あるいはなにか他に理由があるのか、早朝の 鳥やサルのコーラスが7月よりも寂しい。Bornean Gibbon(ミュラーテナガザル)の声がほとんどしない。ヒロハシ、ゴシキ ドリの声も全くといって良いほど聞こえてこない。四季のはっきりしないボルネオだが、いつもいつも同じ動物や野鳥がいるとは限らないらしい。

 ワンコンによると、午前中は9時くらいまでキャノピーで待ち、その後トレイルに入り、Segama Trail を通って、ロッジに戻る予定だという。ロッジを出発してからすぐ、枯れ木に止まるAsian Fairy-Bluebirdをワンコンが見つける。遠いので肝心の色はよく見えない。

 キャノピーの手前の坂を降 りるところで、変な声が聞こえてきた。Bornean Bristlehead(ブタゲモズ)だ。声が遠いので見えないだろうと思っていたら、50mくらい離れた木の上にいる個体を見つけた。うーん、豆粒やん・・・。運良く、徐々に近寄ってきた。2、3羽と思っていたが、予想以上に多い。次から次へと目の前の大木に飛んでくる鳥を数えていたら、なんと10羽前後もいた。赤い頭の頭頂が黄色であることまでは見えたが、名前の由来となっているボサボサの羽までは見えなかった。

 Hornbill Trailの入り口付近で、最初のBlue-headed Pitta(ズアオヤイロチョウ)の声を聞く。「探してみるか?」とワンコンが聞くので、トレイルに少し足を踏み込む。残念ながら、近くで鳴いている個体の更に奥で鳴いている個体がおり、ワンコンの鳴き真似にも反応しなかった。

 キャノピーでイギリス人バードウォッチャーの二人連れに再会。何か見たか?と聞いたら、「今朝はまだなにも見ていない」という。「falconnetを探しているんだけどなぁ」とのこと。彼らが立ち去った後、 ワンコンがWhite-fronted Falconnetを見つける。見たがる人が見落とすことって多いんだよなぁ。

 トレイルの中は前日の雨でズブズブ。ぬかるみを気にしながら、ゆっくりと歩く。ワンコンが Blue-headed Pitta(ズアオヤイロチョウ), Garnet Pitta(ムラサキヤイロチョウ), Sunda Ground-Cuckoo(ハシリカッコウ), Red-naped Trogon(アカエリキヌバネドリ), Diard's Trogon(バラエリキヌバネドリ)等の鳴 き真似をするも特に反応無し。

 なにもおらんなぁ、と思っていたその時、何かがトレイルの右側から出てきて、すぐに飛び去った。「きれい、図鑑の通りだね!」と妻。水色の頭、赤い背中、濃い青紫の胸 が一瞬目の中に飛び込んできた。Blue-headed Pitta(ズアオヤイロチョウ)だ。暗い森の中でも鮮やかな配色はそのままに見えた。5mもなかっただろうか。肉眼でも十分に分かる距離に出てきたからか、トレイル上に止まることなく、飛び去ってしまったのが残念だ。双眼鏡に入れて見たかったなぁ。

 雨が降ったわりにはヒルが 少ないなぁと思っていると、妻が「ヒルに噛まれた!」と叫んだ。「どこや?」と聞くと、なんと脇の下である。なんでそんな変なとこ噛まれるんや?妻はヒルに噛まれても普通の人間のように腫れない。 痒みもないという。ただ、噛まれた場所が小さく赤くなるだけである。「桃饅みたいで、可愛いでしょ?」と一応妻は自慢しているが・・・。

 その後はアルビノのRed Leaf Monkey(写真左)を見かけたくらいで、特になにも出現せず。

 Blue-banded Kingfisher(アオムネカワセミ)やScarlet-rumped Trogon(コシアカキヌバネドリ)が出るも、双眼鏡に入れる間もなく飛んでしまう。橋の上でイギ リス人二人連れに再会。あちらもたいした成果はなかったらしい。

 橋を渡りきったところで Black-backed Kingfisher(ミツユビカワセミ)を見つける。こういうところに止まっていれば、僕でも見つけられる。赤い嘴と頭がよく目立つ。デジカメで撮ろうと欲張って近寄ったら飛んでしまった。

「午後は2時から出かけよう」というワンコンの提案を受け入れ、急ぎ昼食を済ませる。

 午前中、たっぷりと歩いたせいか、妻はかなりくたびれたらしい。昼寝をした後、しぶしぶ用意をしている。

 午後は Hornbill Trailを歩くという。このトレイルでは、前回trogon2種、セイランを見ており、少々期待が持てるコースだ。歩き始めてすぐ、カワセミ(Common Kingfisher)を見つける。茂った藪の中で見づ らい。胸が鈍い褐色をしていることから、どうやら幼鳥のようだ。日本では留鳥で、一年中同じ場所にいる印象が強いが、ボルネオでは冬鳥である。

 その後、しばらくはなにも出現しなかったが、トレイルの両脇の森の中から、時々ヤイロチョウ類の声が聞こえて来る。その度にワンコンが呼び寄せるのだが、 ある程度まで近くに来たら鳴きやんでしまったり、それ以上近づかなかったりで、見られる距離にまでは寄ってこない。

 トレイルの出口もあと2、300mくらいに近づいたところで、再びBlue-headed Pitta(ズアオヤイロチョウ) の声が聞こえてきた。今度は近い。ワンコンが鳴き真似を始めると、少し近くまで寄ってきた。別の方向からはGarnet Pittaが鳴き始めた。これもそんなに遠くない。ワンコンは、あまり反応の良くないズアオヤイロチョウを無視し、ムラサキヤイロチョウ一本に絞って鳴き真似をする。

 声が4-5mのところで一向 に動かないので、ワンコンが藪に入り、探しに行く。程なくして、こっちに来いと手招きする。近寄って探してみるものの、よく分からない。「太い木の右側に出ている枝の上!」と何回も彼は言うのだが、 そもそもどこを指しているのか分からない。どこやねん!横で見ていた妻が、「あっ、いた!」と言っ たので、「どこ」と聞こうとしたら、今度は「飛んだ」。妻は葉陰から見える顔と胸を見たらしい。「黒 っぽいだけだったよ」。それでも見られたのなら良いなぁ。しかし、毎回のことながら、見られない・・・。ワンコンなぁ、お前、人が見られへんかったからといって、なんで機嫌悪くなるんや?  

 ワンコンが再びズアオヤイロチョウを呼んでいると、今度は聞き慣れない騒がしい声がし始めた。「何、 これ?partridge(ウズラの仲間)の声?」と聞くと、「Black-throated Wren-Babbler(ノドグロサザイチメドリ)だ」という返事。サザイチメドリの仲間だからと地上を探していると、「藪の中の枝に止 まっているよ」とワンコン。鳴きながら、動き回るので、影は見えてもなかなか双眼鏡に入らない。よ うやく双眼鏡で捉えた姿は、茶色くて、背中の縞模様がはっきりしていた。この仲間としては大きく、 20cmくらいありそうだ。それにしてもよく動く。肝心の喉はちゃんと見えずじまい。「見たか?」とワンコンが聞くので、二人して頷くと、よし、とばかりに彼は歩き始めた。うーん、ちょっとエラそうや。  

 キャノピーウォークへ向かう途中、トレイルの出口近くで、薄い褐色の大きな影が地上に降りた。すぐに見えなくなったが、どうやらセイランらしい。長い尾羽が見えなかったので、メスのようだ。2時間ほどは全く鳥が出なかったのに、出るときには出るもんだ。  

 キャノピーは相変わらずぱっとしない。デイパックとウェストポーチを置いて、ぼーっと景色を眺めているうちに5時を回ったので、そろそろ帰ろうとワンコンに伝える。「夜はどうする?」と聞くので、 せっかくだから、1時間ほどナイトウォークを頼むことにする。  

 食事の後、イギリス人2人組と再び出会った。「何かいた?」と聞くと、「たいしたものは見なかったなぁ。bristleheadを夕方に見たくらい(十分にたいしたものだが)。そっちは?」、「Black-throated Wren-Babblerが見られたよ。後、Rufous-tailed Shamaがちらっと見られた」と言うと、「良いなぁ! まだどっちも見ていないよ。見たいなぁ!」こういう時はちょっと優越感に浸れる。 ヤイロチョウを見られなかった充足感をこういうところで満たしたりして。

 部屋に戻ってみて、財布がないのに気がついた。「きっと、トレイルで落としたんじゃない?」と妻。 一日中歩いた頭では、記憶も曖昧だ。うーん、お金はあんまり入っていないから良いけど、クレジットカードと免許証が面倒くさいなぁ・・・。念のためと思って、スタッフに聞いてみるが、誰も拾っていないとのこと。いよいよ、トレイルしかないか。まずいなぁ・・・。  

 気を落としつつも、せっかくなのでナイトウォークに出かける。入り口の明かりの下でGiant Leafhopperというえらいでかい虫を見せてもらう。15cmくらいありそうだ。体型はクツワムシのようで背中が大きく盛り上がっている。しっかし、でかい虫やなぁ。

 ロッジ裏のNature Trailに入るとすぐ、 ワンコンがアガマトカゲsp.を見つけた。夕方見かけたのと同じ場所でじっとしている。スタッフ宿舎 の入り口で大木の樹冠近くに止まるBrown Wood Owl(オオフクロウ)をワンコンが発見。久しぶりの対面だ。その後 は結局大したものは出ず。「明日も7時ね」と言って、ワンコンはスタッフ棟に帰っていった。果たして私の財布の行方は・・・。


10月3日 

 最終日。早めの食事を済ませ、部屋に戻る途中、食堂の裏の木の周りで小鳥が騒いでいる。

 目の早い妻 が「フクロウだ!」というので、双眼鏡に入れてみると、Wallace's Hawk-Eagle(ウォーレスクマタカ)が止まっていた。こんなところにぼんやり止まっているなんて。デジカメを取ってきて、食堂の側から撮りに行くと、さすがに近すぎたのか、森の中に消えていった。

 ワンコンは朝から胃の調子が良くない様子。いつにも増して静かだ。目は確かで良いガイドだが、おとなしいよなぁ、コイツ・・・。

 トレイルの上に落としたと思った財布はビデオの入ったポーチごと、キャ ノピーの上に置き忘れていたらしい。朝一番に行ったStevenというガイドが持って帰ってきてくれた。 ヤレヤレ・・・。

 しばらく歩いていると、腕が何かに噛まれたように感じた。よく見ると、小さな蟻が沢山ポーチから出てきている。中身を全部調べてみると、ビデオのマイクや、バッテリーから出入りしている。どうやら一晩で蟻の巣にされてしまったらしい。とにかく、噛まれるとちくちく痛痒いので、出 せるだけ外に出して、それからビニール袋で密封することにした。

キャノピーの入り口まで来たとき、反対側のHornbill Trailからズアオヤイロチョウの声が聞こえたので、トレイルに入ってみる。声はするものの、一向に姿は見えない。仕方がないので、諦めてキャノ ピーへ。

 キャノピーの上でイギリス人たちに再会。やっとfalconnetを見たらしい。えらく自慢している。そーかぃ、見ちまったか。その他に、ブタゲモズが間近で見られたとか。ちょうどこっちがズアオヤイロチョウを追い掛けている時だったようだ。昨日一応見ているから、さほど悔しくはないが、ちょっともったいなかった。  

キャノピーの上は相変わらず静かなもので、退屈気味。小さな小鳥が大木の上を動いているが、 Velvet-fronted Nuthatch(アカハシゴジュウカラ)らしい。

 アオバトらしいシルエットがプラットフォームのある木の真上に止 まった。吊り橋の真ん中まで戻って見てみると、Thick-billed Green Pigeon(ハシブトアオバト)だった。ボルネオでは初めての出現だ。

 黒い大きめの影が何羽か谷から飛んできた。なかなか全身が見えなかったが、大木の陰か ら見えた顔はBlack Magpieだった。吊り橋のそばの蔓には頭の赤が鮮やかなOlive-backed Woodpecker(マレーズアカミユビゲラ)のオスが止まった。7月に来たときにも同じ木に止まっていたのだが、同じ個体だろうか。  

 今日は昨日とは異なり、East Trailという別のトレイルを歩くことになった。ダナム・バレーでは、二日続 けて同じトレイルを歩くことはほとんどない。聞いたところによると、なるべく生態系への影響を少なくするため、各ガイドが同じトレイルを歩かないようにしているそうだ。頻繁に使うトレイルは決まっているので、ロッジの宿泊客が自分たちだけということでもなければ、前日歩いたトレイルには別の宿泊客たちが歩くということになるわけだ。East Trailに入ってすぐ、ワンコンは例のごとくヤイロチョウの鳴 き真似を始めた。彼が鳴き真似をしたのはGiant Pitta(オニヤイロチョウ)だったが、反応したのは ズアオヤイロチョウだった。二羽がトレイルを挟んで鳴いていたので、「今度はじっくり見られるか」と期待したものの、やはり現れず。どうもヤイロチョウ類とは相性が悪いらしい・・・。

 White-crowned Shamaを少しシンプルにし、小声にしたような声はRufous-tailed Shama(コシアカシキチョウ)。前日はあまりよく見ら れなかったが、この日は赤茶色の尾羽もばっちり見えた。

 East Trailはあまり使われることがないのか、これまで歩いた他のトレイルと比べると、やや荒れている。一昨日の大雨のせいもあり、また一ヶ月前に通ったというゾウのせいもあり、トレイルのぬかるみは酷いものだった。

 「これ、ゾウの足跡」とワンコンが教えてくれたのは、ほとんど穴ぼこと化して いた。ほとんど鳥の影を見かけないまま、10時半を回った頃、ワンコンが何回も鳴き真似をしていた、オニヤイロチョウの反応があった。「フィーッ、フィーッ、フィーッ」とゆっくりとしたペースで、徐々に強 くなる声はムラサキヤイロチョウとは明らかに異なる。彼の口笛に2回反応し、3回目にはかなり近くまで来たが、それからいくら呼んでも反応はなかった。諦めかけていた頃、再びズアオヤイロチョウの声。それにしても何回呼んでも近くに来ないなぁ。

 結局この時も見られず。ヤイロチョウを待っていると、他の鳥がよく目に付く。このときもBlack-throated Wren-Babbler(ノドグロサザイチメドリ), Sooty-capped Babbler(ズグロチャイロチメドリ)などが見られた。

 ワンコンの口笛に、Red-naped Trogon(アカエリキヌバネドリ)が反応した。しかし、これも1回鳴いただけ。結局、この旅行中、trogonは2日にちらっと飛ぶのを見たScarlet-rumped Trogon(コシアカキヌバネドリ)のみだった。

 トレイルの出口付近 でBrown Wood-Owlの幼鳥に出くわす。昨晩見たものと同じ個体だろうか。近くで見ると、昨日よく分からなかった頭部の綿毛がよく見える。 服を着替えるというワンコンとは、橋を渡ったところで別れ、部屋に戻る。

 靴を脱ぎ、ヒル除け靴下を脱ぐと、あちこちにヒルがひっついていた。

 昼前に荷物を詰め、12時過ぎに食事を済ませる。出発前、 食堂の前を通りかかると、イギリス人の二人連れが遅い昼飯を食べていた。彼らはBlack-throated Wren-Babblerに加え、Banded Pitta(キマユシマヤイロチョウ)をHornbill Trailで見たらしい。

 「テープによく反応するよ。見に行くか?」と言われたのだが、残念ながら出発まで時間がない。次回の楽 しみに取っておくしかなさそうだ。

 二泊三日、ほとんどずっと森の中で時間を費やし、散々2種類のヤイロチョウを探し回ったが、偶然トレイルを横切ったズアオヤイロチョウを見ただけに終わった。その他の鳥たちも、trogonは実質無し、 ヒメアオヒタキ(blue flycatcher)の仲間も無しで、やや物足りなかった。

 一方、Black-throated Wren-Babbler, Rufous-tailed Shama, Bornean Bristleheadなど、7月に来た時にはほとんど影も形も なかった鳥たちも出現した。

 蟻やダニや蚊にあちこち食われるのは嫌だが、また来年来ることになりそうだとワンコンに言ったら、ニンマリと笑っていた。

- 完


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