ダナム・バレー探鳥記1(1日目)


ボルネオ島の東部
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ダナム・バレーの朝は霧の中
 
© 2007 Koji TAGI


 

1.出発まで

 「こっちに来て、そろそろ3ヶ月になるし、どこか旅行に行きたいなぁ」とある日奥さんが言い出した。「ほいじゃ、クアラルンプールでも行くか?」という話をしていたのだが、どうせなら 野生動物が見られるところとなり、いつの間にやら、ダナム・バレー行きの計画を立て始め ていた。 ダナム・バレーはサバ州のほぼ真ん中にある。その昔、まだマレーシアに最初に住む前の こと、「地球の歩き方」のダナム・バレー紹介の記事を読み、「こんな不便なところ、とて もよう行かへんワ」と思っていた。まず何より、交通のアクセスが不便だ。首都のクアラルンプールからコタキナバルまで2時間半、コタキナバルから飛行機を乗り継いで1時間Lahad Datuまで行き、そこからさらに車で2時間半かかる。次に宿泊費がメチャクチャ高い。一泊最低でもRM400はする。三食込みとは言え、天下のHyattですらRM200(朝食込み)で泊ることのできるマレーシアでは、信じがたい値段である。

 そんな簡単に行けないダナム・バレーを今回の目的地に選んだのにはそれなりの理由がある。まず、前回行ったスカウも毎週のように通っているキナバル公園も決して自然環境が良く残されているとは言い難く、見られる鳥や獣に満足感を得られないこと、次にコタキナバルからであれば、「時間がかかる」とは言っても半日で現地に到着すること、最後に現在サバ州の一行政府に席を置く私には、ローカルレートが適用になり、2−3割程度宿泊費が安くなることが分かったからである。もはや、「高くて、不便な場所」ではなくなった。

 ダナム・バレーの宿泊先は一般的にはBorneo Rainforest Lodgeが知られている。Field Centreも宿泊施設を持っているが、予約等に手間隙がかかるため、あまり一般的ではない。 Borneo Rainforest Lodgeの運営は、現在はBorneo Nature Toursという会社が行っている。 ここに宿泊の予約を入れ、現地でのガイド及び、Lahad Datu空港への往復交通機関の手配 を依頼した。ガイドは鳥の専門のガイドではないということであったが、専門のガイドを 予約するとさらにガイド料がプラスになると聞き、今回はやめておいた。後のことになる が、これが吉と出たか、凶と出たのか…。

 どうせ行くなら、見たいものはできるだけ多く見たい。以前、Taman Negaraに2泊3日で出かけたことがあったが、予想以上に時間がかかることから、ほとんど何も見られず に帰ってきたことを思い出し、3泊4日とした。飛行機代と合わせ、旅費は二人分合計で RM3,000近く(約90,000円)にもなった。うーん、やっぱり高い・・・。

 僻地のリゾートホテルというと、飲食物が恐ろしいほど高いことがある(結局、タイガービールRM9.20、コーラRM4.5だった。ビールはともかく、コーラが高い!)。旅行までに菓子を少しと水を合計3リットル分購入し、ザックに詰めた。いつものタクシーのオヤ ジに電話を入れ、5時40分に迎えに来るように頼み、出発の準備は万端整った。


 2. 2004年7月8日 (初日 コタキナバル -ラハッ・ダトゥ - ダナム・バレー) 

 眠い目を擦りながら、パンとメロンだけの朝食を済ませ、空港へ向かう。Lahad Datu行 きの飛行機は一番端の6番ゲートから出発だ。先に6時45発のラブアン行きの飛行機が出 るため、アナウンスは5分前となった。搭乗機はプロペラのフォッカーで、せいぜい70人 ほどしか乗られない小さな機体だ。プロペラのうなる音がし、すぐに機体は空へ舞い上が った。

 キナバル山を横に眺め、延々と続くアブラヤシのプランテーションを見下ろしていたら、 すぐにLahad Datu空港に到着した。知人のT君が「ガソリンスタンドみたいな空港です よ」と言っていたが、隣のShellの方がよほど立派だ。平屋の建物の中には、搭乗受付カウ ンターが二つ、他に荷物を受け取るカウンターが一つ。すぐ脇は食堂になっている。それ以外には待合スペースとトイレしかない。荷物が出てくるまで10分もかからなかった。

 空港を出ると、Borneo Nature Toursのスタッフが出迎えてくれた。一旦、同社の受付に行き、領収書を受け取り、出発時間を確認した後、暇つぶしにLahad Datuの町に出る。空港の近くにちょっとした町がある。通りが縦に3本、横に4本の小さな町だ。町中の板麺屋で腹ごしらえ。安くてなかなか美味かった。

 トレッキング用の軍手を買った後はやることがなくなったので、Borneo Nature Tours に戻る。ぼーっと座っていると、スタッフが気を利かせて、嶋田忠氏のビデオを見せてく れた。ビントロング(クマネコ)をテーマにしたものが一本、続いてカワリサンコウチョウをテーマにしたものが一本だったのだが、民放なのか、一本目は途中でテーマがサイチョウからビントロング(クマネコ)に変わったのがバレバレで、いい加減な編集内容だった。

 9時半、ようやくLahad Datuを出発。Lahad Datuの市内には、アブラヤシプランテー ションか木材取引で儲けたのか、邸宅が並ぶ。  わずか20分ほど走った後、Tawauへの国道をそれ、ダナム・バレーへの道へ。ここから 先は未舗装路が延々80キロも続く。この分岐路でラブアンから来たという日本人の夫婦連 れと合流する。ラブアン3泊、ダナム・バレー2泊という強行スケジュールらしいが、これで総額 18万というのは安価だ。

 道路沿いには延々と植樹された若い木の林が続く。Sabah Foundationが持っている土地 らしいのだが、かなり計画的に伐採され、植樹されている様子が伺える。ダナム・バレーは Sabah Foundationの大規模所有地のほんの一部にしかすぎない。Sabah Foundationとい うのは、こちらの人に聞く限り、非常に不思議な機関だ。州内に大規模な土地を持ち、そ の土地利用を自分たちで決め、表向きは上がった利益で貧困層の学生支援や、半島への留学資金の支援を行ったりしている。しかし、地元の政治家と結びつき、政治家の資金源に なっているという話も聞こえてくる。本当の意味でのボルネオの自然保護を達成する上で は、Sabah Foundationの関与は欠かせないが、閉ざされた組織という印象があり、誰も手 を出すことができないのが現状だ。話は戻るが、ダナム・バレーのRainforest Lodgeにも、 そんなSabah Foundationの影が見え隠れする。

 途中の検問所から先は、ほぼ人が住んでいないと言っても良いような場所なのに、なぜ か道路幅は10m程度あり、道もさほど悪くない。木材伐採用の大型車が直径2mもある大木を積んで次々にやってくる。ランドクルーザーがネズミほどの大きさにしか見えない。1時間ほど走ったところで、車の前方に何かいるのを発見する。Crested Fireback(コシアカキジ)だ。オス、メス2羽いたが、青い顔にクリーム色の尾をしたオスはすぐに藪に入ってしまった。一方メスはしばらく道路上でたたずんだ後、ゆっくりとオスが入った草陰に入っていった。

 1時間半ほど走って、ようやくField Centreとの分岐を通り過ぎる。徐々に樹高は高くなり、森もより深くなってきた。広い道をそれ、細い道に入って15分ほどでようやく Rainforest Lodgeに到着。結局、2時間15分ほどかかり、着いたのは12時前だった。

 到着後、すぐにロッジに関するブリーフィングを受ける。ロッジとは言っても、レスト ランのあるホールは室内の天井高が5mくらいある、なかなか立派な建物である。Welcome Drink(マンゴー&Honey Dewメロンのミックスジュース!)が振舞われるが、一緒に到着した夫婦連れの女性が別の飲み物を頼んでいる。「変わった人だな」と思っていたら、「マ ンゴーアレルギーなんですよ」とのこと。同じアレルギーを持つ妻であるが、「う〜ん、とろぴかるで美味しい」と気にもせずに3日間飲み続けた。結果、帰る前の日から発疹が出てしまった。「私もう、マンゴー食べられへんかナ・・・」と、悲しそうな口調の妻。

 続いて、部屋に通されたが、予約していた部屋と違ったため、部屋の交換を申し出る。「お風呂が着いてなぁい!」と文句を言う妻。(しかし、こんなとこへまで来て、風呂に入りたがるかな)。疲れも重なって、ややご機嫌斜めらしい。

 「部屋 の掃除が終わるまで、待って」とのことだったので、先に昼食を済ます。日本人客が多いのだろうか、榎木孝明(?)のような、ちょっと濃い顔をしたコックが、「サカナ、ニク、 オイシイネー」と怪しい日本語で話しかけてくる。高いだけあって、さすがに料理の質は悪くない。デザートまで一応用意されている。このレベルであれば、観光客にも文句は出ないだろう。

 食事が終わった後、ようやく部屋でくつろげることになった。今回はローカルレートで頼んだため、DeluxeもStandardも同じ値段と聞き、「それじゃ」とDeluxeの部屋をあら かじめ頼んでおいた。ダブルとシングルのベッドが一つずつ、小さな冷蔵庫があり、バスタブにシャワールームが着いている。エアコンはないものの、木陰に立つコテージでは、 建物の中は案外涼しい。

 早起きと2時間半の移動に疲れたのか、妻は一眠り。昼寝のできない私はベランダで図鑑を見ながら、一休み。ベランダの脇の藪では、Yellow-rumped Flowerpecker(キゴシハナドリモドキ)が花を食べている。よく見てみると、花びらではなく、めしべだかおしべだか、花の中身を食べている。続いて、わずか3mほどの高さの低木に、背中の青い小鳥が止まった。背面しか見えず、一見、「オオルリに見えるけど、この時期おらんよなぁ」と思っていると、振り向いて鮮やかなオレンジの胸が見えた。Malaysian Blue Flycatcher(マ レーヒメアオヒタキ)のオスだ。この仲間は互いによく似ているのだが、喉が青いのが本種の特徴だ。遠く、Segama川の対岸では、Rhinoceros Hornbill(サイチョウ)の声が響 き渡っている。なかなか贅沢なひとときである。

 3時半から、アクティビティの開始。部屋を出ると、いきなり、Bornean Gibbonの(ミ ュラーテナガザル)の姿を見つける。幸先良いスタートだ。 集合場所で待っていると、雨のため、少し待つように言われる。

 私たちのガイドのDonny は目つきの鋭い、オールバックの若者だ。私たちの目的がバードウォッチングであること を告げると、「じゃあ、まずはキャノピーウォークに行こう」という返事。 歩き出してしばらくして、濃い森の奥から、口笛のような音が聞こえてきた。「フィー」 と、一本調子の声の主は、Black-headed Pitta(ムラサキヤイロチョウ)なのだそうだ。半島のものに比べると、やや節が長い。

 約10分歩き、小さな沢の手前で、ガイドが後ろを指差した。振り返ってみてみると、オ ランウータンがぶら下がっていた。野生の個体との初めての出会いはやけにあっけないも のであった。オランウータンの性格はやや鬱と聞いていたが、性格のみならず、顔つきも鬱のような小難しい顔をしている。時間は早いものの、どうやら今日の塒を探しているようだ。

  しばらく観察した後、いよいよキャノピーウォークへ。Porlingのものと異なり、やや急 な階段を上るだけで、アプローチはこちらの方が易しい。吊り橋もプラットフォームもこ ちらの方が規模は大きい。三つ目のプラットフォームでしばらく鳥を探すことに。プラッ トフォームのすぐそばの木では、Red-billed Malkoha(アカハシバンケンモドキ)が休ん でいた。我々の姿を認め、少しずつ、木の上の方に移動し始めた。  

 プラットフォームからは、かなり多くのゴシキドリの声が聞こえるのだが、なかなか姿 が見えない。やっとの思いで、Red-throated Barbet(ノドアカゴシキドリ)のメスと Gold-whiskered Barbet(キホオゴシキドリ)を見られた程度。 2時間ほどプラットフォームで粘って見られたのは、この他、Black-bellied Malkoha(ク ロバンケンモドキ)、Black-and-Yellow Broadbill(クビワヒロハシ)、Banded Broadbill (アズキヒロハシ)、Greater Green Leafbird(オオコノハドリ)、Large Woodshrike(オオモズサンショウクイ)、Ruby-cheeked Sunbird(ホオアカコバシタイヨウチョウ)など。

 夕食を食べに、一旦ロッジへ戻る。先ほどのオランウータンは既に塒を作ってお休み中。 途中から合流した他の日本人4名は、結局腕の赤茶色の体毛しか見えなかった。  夕食後、一休みをして、第2ラウンドへ。今晩はナイトドライブに参加。荷台の前の方に陣取り、出発時間を待っていると、胸に縦斑のある大型のフクロウが飛んだ。Buffy Fish-Owl(マレーウオミミズク)らしい。一度飛んだだけで、結局その後は姿を見なかった。

 座ったところが木製のベンチで、こりゃ疲れそう…。ガイドは、ややオカマチックな声で話すお兄ちゃん。時速せいぜい30km程度のゆっくりとした速度で走り始めた。動き始 めて10分も経たないうちに、ガイドが川にいるカワウソを見つける。すぐに水中に潜り、 見えなくなってしまった。しばらく待っていると、再び浮上し、どんどんこちらに近づい てくる。明かりで照らされて浮かび上がった魚を狙っているのだろうか。ガイドの説明で は、Small-clawed Otter(コツメカワウソ)ということだったが、今ひとつ他の種との違いがよく分からなかった。

 しばらく進んで見つけたのは、高木に浮かび上がった、Thomas's Flying Squirrel(トマスクロムササビ)の姿。お目当てのフクロウ類の姿はなし。2時間のドライブはやや肌寒く、 出るものも少なく、少し退屈であった。うとうとし始めていたら、Blood Pythonが道路端 にいるのをガイドが見つける。夜だからか、ひし形の頭をもたげ、ゆっくりと移動している。胴回りが太い。ロッジのそばでGreater Mouse Deer(マメジカ)を最後に見つけたも のの、長時間のわりに収穫は少なかった。


二日目は日本の懐かしいキャラクターが登場



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