ダナム・バレー探鳥記 2


最もボルネオらしい
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ダナム・バレーの朝は霧の中
 
© 2007 Koji TAGI


 

 わずか二週間ほどでダナム・バレーに舞い戻ることになったのは、日本から来る小学生高学年から高校生まで総勢約30名の旅行の視察の仕事が決まったからである。

 仕事というこ とで、7月上旬に来たときほどには野鳥観察に専念できないものの、合間を縫って多少鳥を探すことはできそうだ。荷物の中に双眼鏡、ビデオカメラ、図鑑を後から積み込んだ。

2004年7月23日 コタキナバル - ラハッ・ダトゥ - ダナム・バレー

 Lahad Datuの町の出発は午後になった。ダナム・バレーの天気はどうだろう。雨と到着時間が心配だ。

 チェックポイントを過ぎると、左手の道路脇に雨水がたまり、川のように流れていた。どうやら既に一降りあった後らしい。

 1時間半ほど走ってからだろうか、道路の右手に大きな動物が現れた。なんと、アジアゾウ(写真左)である。めったに車が通らないとはいえ、時間はまだ4時半過ぎ。車道から10mも離れていない。ゾウはすぐに森の中に消えて行ったが、思いがけない出会いに同行者皆が歓声をあげた。

 フィールドセンター着は午後5時。しばらく休憩してから、早速森の中に入る。セガマ川の吊り橋を渡り、トレイルに入るとすぐにBlack-and-Yellow Broadbill(クビワヒロハシ) の声が聞こえてきた。

 森の奥では、Black-headed Pitta(クロアカヤイロチョウ)が鳴いている。口笛で真似てみるが、近寄ってきそうにない。じっとしていると蚊とヒルが寄ってくるので、仕方がなく少し歩き始める。 大きな影が横切り、枝に止まった鳥を見てみたら、Black Hornbill(クロサイチョウ)だっ た。塒へ帰るところなのだろう。Red Leaf Monkey(レッド・リーフモンキー)の小群が樹上で賑やかに騒いでいる。夕暮れ前の最後の森の喧騒だ。

 夕食後、センターの食堂脇にあるバトミントンコートの周りを歩いていると、Buffy Fish-Owl(マレーウオミミズク)に出会うことができた。大型のフクロウで、耳羽がはっき りと目立つ。どうやら、外灯に集まる昆虫を狙ってやってきたらしい。こちらに対して、「シ ュー、シュー」と威嚇するような声を発している。マレーウオミミズクはフィールドセンター周辺では結構普通に見られるらしく、多い時には3羽同時に見られるという。なにはともあれ、見たかった鳥なので、運が良かった。

2004年7月24日 ダナム・バレーフィールドセンター

 二日目は5時半過ぎに眼が覚めた。朝一番に聞こえてきたのは、Bornean Gibbon(ミュラ ーテナガザル)の声だ。空が白み始めるに従って、シキチョウ、メグロヒヨドリなどの声 も聞こえてきた。森の中でこれらの里の鳥に会うのはちょっと不思議なもんだ。フィールドセンターはできて20年近くになるが、その間に森の奥まで進出してきたのかもしれない。だとしたら、あまり良い徴候とは言えないか。

 6時過ぎに宿舎の周りで探鳥を始める。この朝最大のボーナスはBlack-backed (Oriental Dwatf) Kingfisher (ミツユビカワセミ)。ホステルに続く道沿いの低い木の枝に止まったの を運良く見つけることができた。スズメよりも小さなカワセミなので、簡単に見過ごして しまう。赤い頭に光沢のある紫の上面が非常に美しい。

 朝食後、今度はジャングルの中へ。日本人の子供大勢への同行なので、たいしたものは見られそうもない。案の定、なにもおらんなぁと思っていたら、別のグループがマレーヒヨケザルを見つけたという。ガイドと共に、早足で見に行く。うーん、これは見つけやす い!木の幹に瘤ができたようにぶら下がっている。逆光でよく見えないのが残念だ。

 夕方、昨日リーフモンキーがいた森に再び足を踏み入れる。賑やかなキツツキの声が聞 こえるが、どうやらWhite-bellied Woodpecker(キタタキ)らしい。

 「フィーォー」という、 か細い口笛のような声が聞こえてきたので、口笛で真似てみる。しばらく待っても全然動 く様子がないので、藪の中に入ってみると、中型の茶色い鳥がパタパタと飛び出した。ん? なんやこれ?よくカモフラージュされた模様の体に、ピグモン(古い!)みたいな愛嬌のある顔が乗っている。おっ、
ガマグチヨタカやん!肩に白い模様があり、腹にはうろこ状 の斑が目立つ。ガマグチヨタカはボルネオに数種類おり、すぐには種類が分からなかった。 デジカメを持ち出し、数コマシャッターを切る。ストロボをがんがんたいたお蔭で、それなりの写真を撮れたのだが、そのせいで電池がほとんどなくなってしまった。ガマグチヨ タカは後で調べてみると、Javan Frogmouth(ジャワガマグチヨタカ)のオスと分かった。

 蒸し風呂のような熱帯林から部屋に戻り、シャワーを浴びて夕焼けを見ていると、大き なGreat-billed Heron(スマトラサギ)が下流に向かって、ゆっくりと飛んでいくところだった。

この日の晩はナイトウォーク。昼間、さんざんヒルに脅かされた子供たちはヒルが気に なって歩くどころではないらしい。結局光るきのこくらいしかみられなかった。

2004年7月25日 フィールドセンター - レインフォレストロッジ

この日も朝から早朝バードウォッチング。まずはホステル前の上空を飛ぶBat Hawk(コ ウモリダカ)を見つける。ハヤブサのような体型で、ほとんど全身が黒。時間からすると、 餌のコウモリでも探しにご出勤だろうか。続いて、空き地の木にBlack-and-Red Broadbill(ク ロアカヒロハシ)が4羽来ているのを見つける。晴れていると鮮やかに見える赤も、曇っ ているとどす黒い色に見えてしまう。さらにBlue-throated Bee-eater(ルリノドハチクイ)、 クモカリドリの仲間に立て続けに出会う。あまり鳥のいなかった前日とは異なり、今日は鳥影が多い。 早朝自然観察のために子供たちが集まるホステル前に戻ってみると、ちょうどRhinoceros Hornbill(サイチョウ)が飛んできた。ちょっと距離はあるものの、全身がよく見える。う ーん、さすがに迫力があるなぁ。

 早朝観察会では、吊り橋の上に止まっていたVerditer Flycatcher(ロクショウヒタキ)、レ ッドリーフモンキーなどに出会う。子供たちはオランウータンを見たがっていたが、この日もご欠席。 午前中、再度自然観察会に出かけた後、インタープリテーションセンターの前に出てくると、ちょうどサイチョウが手頃な木の枝に止まっていた。距離はとても近いのだが、なにしろ逆光だ。ビデオを構えてしばらく粘っていたのだが、やはり上手く撮れない。焦れて少し近づいてみたら、案の定飛んでしまった。うーん、もう少し待つべきだったか。それにしてもサイチョウをよく見かける。木の実の成り具合が良いのか、非常に見えやすい。

 昼食前にセンターの食堂の前で休憩をしていたら、少し雰囲気の異なるサイチョウが飛んだ。頭の上の突起が赤いものの、顔は白っぽい。Wrinkled Hornbill(ズグロサイチョウ) だ!ズグロサイチョウは急降下して、森の中に消えた。

 食堂の前でもう一種。眉斑の鮮やかな、胸の赤褐色の小鳥が草陰から見え隠れしている。 普通種のマレーヒメアオヒタキとは少し雰囲気が異なるようだ。ベランダの縁まで近寄って見てみると、どうやらBornean Blue Flycatcher(ボルネオヒメアオヒタキ)のオスらしい。 双眼鏡!と思って取りに行っている間に飛んでしまった。うーん、愛想が悪いなぁ。

 午後はRainforest Lodgeへ移動。2週間ばかり前に来ているから、受付でも食堂でも、「あれ、また来たん?」と聞かれてしまった。食堂の兄ちゃんには、"My friend"と言われるし。

 チェックインを済ませ、再びジャングルの中へ。ジャングルから戻って、シャワーを浴びていると、「オランウータンがおった!」と子供たちが騒いでいる。どうやらダナム川の対岸の木にいたらしい。「惜しいことしたな」と同行しているスタッフに言われたものの、「ううん、前に散々見ているからええねん!」と返事した。

 川の向こうの木では、サイチョウ のペアが羽繕いを仲良くやっている。なんとも贅沢な景色だ。 この日も活動はnight walk。ヒル嫌いの多い子供たちの間では不評のようだ。別にヒルに喰われてもなんてことないねんけどなぁ。痒いだけやねんけど・・・。night walkはあんまり productiveちゃうねんけど・・・と思っていたら、Brown Wood Owl(オオフクロウ)を見つけることができた。マメジカもいたらしいが、これはよく分からなかった。Little Spiderhunter (コクモカリドリ)は前回と同じ食堂の裏の木で嘴を羽の中に入れて眠っていた。  

 ここの主のBabi Hutan(ヒゲイノシシ)はこの日も登場。毎晩見つづけている子供達からもそろそろ飽きられてきた頃だろうか。

7月26日 レインフォレストロッジ 

 この日の早朝は広い車道沿いを少し歩く。高い木の上でミュラーテナガザルが3頭鳴き交わしている。テナガザルはオスではなく、メスが鳴くのだそうだ。  

 早朝の観察会はたいした成果もなく終了。食堂に戻ってみると、オランウータンが川の対岸で朝食中だった。  

 朝食後、子供たちは展望台まで登ることになった。景色はええけど、うーん、ここ歩いてもなんにもおらへんなぁ・・・。  

 ロッジに戻る前に子供たちは川へ泳ぎに行ったので、先にゆっくりと帰ることにした。 静まり返ったトレイルでは、Ruby-cheeked Sunbird(ホオアカコバシタイヨウチョウ)、サイ ホウチョウの類が見え隠れしている。「チーッ」という鋭い声と共に姿を現したのは White-crowned Forktail(エンビシキチョウ)だ。ボルネオでは山地にしか生息していないと 思ったのに、意外な出会いだ。  

 ダナム川の橋の手前で、Asian Paradise Flycatcher(カワリサンコウチョウ)のペアに出会った。オスはメスを追い掛け回していたが、まだ繁殖期なのだろうか。  

 昼食後、少し時間ができたので、再びジャングルへ。ロッジ正面から延びる木道を歩い ていたら、目の前の木にオランウータンがいた。しばらくじっとしていたものの、やがて動き始めると、右手に子供がぶら下がっているのが見えた。まだ小さな子供で、目がぱっちりとしていて愛らしい。

 さらに歩くと、今度はコシアカキジのペアに遭遇。森の中でも黒っぽいビロード状の羽が輝いて美しい。さらにしばらく歩き、川沿いのトレイルに出る。「また、 獣臭いなぁ」と思って、大木の上を見上げたら、またしてもオランウータンの親子連れ。 今度の子供は結構大きい。どうやら親離れする時期の子供のようだ。母親は既に妊娠しており、お腹の膨らみが目立つ。木の実を食べているのか、時々枝を手繰り寄せる物音が響 き渡る。しかし、今日はよくオランウータンを見るなぁ・・・。

 5時を過ぎたので、トレイルから車道に戻ると、レッドリーフモンキーの群れがちょうど 高い木の上で葉を食べていた。しばらくサルを観察していると、近くの木に大型の鳥が止 まった。「スンダガラスかな」と思ったら、クロサイチョウのオスだった。

 遠くで口笛のような声が聞こえる。おぉ、Black-headed Pitta(ムラサキヤイロチョウ)だ。 早速口笛で鳴き真似をしてみる。今回は反応し、だんだん近くまでやってきた。10分ほどで、5mくらいの距離まで近寄ってきた。20分ほど5mくらいの距離で待っていたが、やっ ぱり見えない。鳴き真似を繰り返しているうちに、道路の反対側でもクロアカヤイロチョ ウが鳴き始めた。うーん、どっちも近いのになぁ・・・。

 6時10分まで粘って見たものの、今回も見られず。2mくらいまで近寄ってきているのに、なぜ見られないんだろう・・・。  

 夕食後、子供たちはナイトドライブへ。座る席がない私はのんびり留守番。同行したスタッフの一人は、最後の最後に乗って、トラックの運転台の屋根につけてある、ガイド用 の椅子をガイドと半ケツでシェアして参加した。子供たちから、ブーイングの嵐を受けて も、ええやろ!とばかりに、上から見下ろしていた。さすが中国系、あつかましさが筋金入り!  

7月27日 ダナム・バレー - ラハッ・ダトゥ - コタキナバル 

 最終日も朝から探鳥。前日オランウータンを見た木道を歩いていると、アンモニア臭い においがしてきた。案の定、オランウータンである。しかも4頭もいる。朝食に余念がな いらしく、バリバリと枝を折る音があちこちで聞こえる。 キャノピーまで歩いて帰る途中、子供たちにオランウータンを見せて欲しいという依頼で、朝オランウータンを見た場所へ。せっかくBlue-headed Pitta(ズアオヤイロチョウ)が鳴いているのに、残念ながら見る時間がない。

 朝飯を食べに食堂に行くと、今度は別のオランウータンが2頭。しめて6頭!しばらく見なくてもええなぁ。

 朝食後は子供たちの体験発表会を見学。今回も結局ヤイロチョウ類には出会えなかった。 荷物をまとめ、チェックアウトを済ませる。

 そろそろ出発しようかというときに、日本人のバードウォッチャーグループが到着。おや、新和ツーリストや。かつてガイドをしたこ とがある新和のツアーには、ちょっときつそうな女の人がガイドで来ていた。

 グループの荷物の名札に見慣れた名前があるのに驚いた。以前に銚子で会った、旧友I君の叔父さんのSさんのものだった。Sさんは愛媛の人だが、最初に会ったのが銚子で、約10年ぶりに出会ったのがボルネオの奥地というのも面白い。こちらも驚いたが、向こうもかなり驚いたことだろう。

 帰路は雨の中になった。午後になるとやはりよく雨が降る。ダナム・バレーでは、依然、 朝:晴れ→水分の蒸発、午後:曇り→雨という、熱帯雨林のサイクルが残っているようだ。

 今回は仕事での同行だったためか、80種に留まった。2回目だったが、依然見たことのない種も見られ、まだまだ観察したい鳥も残っていることから、改めて訪問したい。


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