スカウ探鳥記


テングザルが憩い、
サイチョウが飛び交う
2004年のスカウの探鳥記です。

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朝もやのキナバタンガン川 - スカウの冒険はここから始まる
 
© 2007 Koji TAGI


 

スカウといえばテングザルである。


今回の旅行はそもそも、「テングザルが見たい!」という、ウチの奥さんの要望からはじまった。どうせなら、動物園ではなく、野生のものを。となると、スカウにでも行くか!ということになった。日本のテレビでもスカウのテングザルの映像は旅かさね見せられてきた。散々あおられてきたので、スカウには是が非でも行きたいと思っていた。この話を同じプロジェクトで仕事をしているUさんに話したところ、「僕も行きたい!」となり、二人が三人になった。人の目が増えることイコール見える動物や鳥を見る機会が増えることである。私たちの目的はテングザルだけじゃないのだ。やっぱり、熱帯の鳥が見たい。

 行き先はスカウに決まったものの、ツアー会社選びに難航。Wildlife ExpeditionsかBorneo Ecotoursかで迷い、融通性が利くという一点で前者を選んだ。

4月9日 コタキナバル - サンダカン - スカウ


 午前4時半起床。眠い目をこすりながら、コタキナバルの空港へ向かう。コタキナバル空港の出発は午前7時。夜明け直後のこの時間には、サンダカン以外にクアラルンプール、ラハッ・ダトゥ、ラブアン等へ次々に飛行機が飛び立つ。今回は私以外に、私の妻、仕事仲間のUさんが同行者だ。我々3人の乗る便はほぼ満席。予定通り7時にコタキナバル空港を出発したかと思ったら、わずか40分ほどでサンダカンに到着。空港の外ではガイドのT氏が待っていた。

 まずはTurtle Islandへ向かう他のツアー客をおろすべく、サバホテルへ。サバホテルでしばらく待てども肝心の車が来ないので、タクシーでセピロックの駐車場へ向かうそこでイギリス人女性2人を拾い、先に合流していたオーストラリア人のカップルとの合計7人でスカウへと向かう。

 サンダカンの郊外を抜けるとそこは一面のオイルパームプランテーション。行けども、行けども同じ景色が続く。ラハッ・ダトゥとの分岐を過ぎ、非舗装道路の荒れた道に入る。日差しがまともに社内に照りつけ、暑い上に尻に振動がまともに来る。前の前の席で、同行のイギリス人の女性たちがエアコンを自分たちに向けている。寒いらしく、カーディガンを羽織りだした。「寒いんやったら、こっちに向けてくれんかい!こっちは灼熱地獄やねんぞ」

 途中、Gomantong Caveに立ち寄る。この洞窟の中には、アナツバメの巣(中華スープの素です)が沢山あるらしいのだが、興味のない我々3人は付近で鳥探し。日差しがきつく、かなり暑い。小さな小川があったので、その傍で探鳥。ぜんまい仕掛けのおもちゃのような、にぎやかな声の主をたどると、頭の赤いRufous-tailed Tailorbird(ズアカサイホウチョウ)がいた。いきなり初見の鳥で幸先が良い。

 木道の上を進むと、今度は大きな物陰。Chestnut-breasted Malkoha(チャムネバンケンモドキ)の登場。歌舞伎役者のような赤い隈取が印象的な鳥である。普通種だが、何度見ても楽しい鳥だ。

 昼過ぎにGomantong Caveを出発。道路沿いで、ガイドのT氏が猛禽類を見つける。Crested Serpent Eagle(ミナミカンムリワシ)のようだが、尾羽の基部の白色部が大きく目立つ。顔の黄色の裸出部も目立つが、ひょっとすると、Mountain Serpent Eagleか?2時前にようやくボート乗り場に到着。ボートに乗り換えたかと思ったら5分ほどですぐにスカウ・リバー・ロッジに着く。まずはチェックイン、汗でベトベトになった体をシャワーですっきりさせる。

 リバークルーズの出発は3時半だ。少し昼寝をした後、張り切ってボート乗り場へ。「これは先頭に乗らないと意味がない!」と意気込み、我々夫婦は最前席に陣取る。後ろのU氏の隣には、巨漢のガイドT氏が座る。オッサン、舟めっちゃ揺れてるやン。

 このT氏、浅黒い顔に小さい目、チョビひげを生やし、のほほんとした口調で話す。誰かに似ているなぁ、と思ったら
バカボンのパパや。このバカボンパパ、少し日本語を操ることができるらしい。人の顔を見ると、「ちょっと待って下さい」と言い、カニクイザル、テングザル、ブタオザル、サイチョウ、カワセミなどの日本語をちゃんと覚えている。キナバタンガン川に注ぎ込む川幅10m程度の細い川にボートは入っていく。午後4時前の日差しはまだきつく、あまり鳥も動物もいない。

 川沿いの木から、何かが川面に飛び込み、すぐに元の木に戻った。カワセミの仲間かと思ったら、Black-naped Monarch(クロエリヒタキ)だった。こいつがこんな風に水浴びをするとは思わなかった。その後、この川沿いで何回もこの鳥にはお目にかかることになる。

 川面を長く白い尾羽の小鳥が横切る。Asian Paradise Flycatcher(カワリサンコウチョウ)のオスだ。白い尾羽が茂った木々の間からでもよく目立つ。
 川沿いを低く「チッー」と鋭く鳴いて飛ぶ影がしたので、双眼鏡で見ると、Blue-eared Kingfisher(ルリカワセミ)だった。半島では珍しいこの青いカワセミは、ここSukauではよく目にするらしい。青い上面とオレンジ色の下面のコントラストが鮮やかだ。
 カワセミの止まった枝のすぐそばで、Black-and-yellow Broadbill(クビワヒロハシ:写真下)が鳴いている。しきりに鳴いているので、じっと探すと、なんとわずか10mほどの距離の枝に止まっていた。しかも、珍しく目線の高さだ。バードウォッチング歴の浅いウチの奥さんにも、世界40カ国で鳥を見ているというU氏にもこの鳥は好評だった。青い嘴、淡いピンクの胸、黒く大きい頭に黄色い目と短い尾は、あまり鳥らしくない、コミカルな姿で、いつ見ても楽しい。

 Black-and-yellow Broadbillにしばし感動した後、今度はバカボンパパ氏が、「Bornean Blue Flycatcher(ボルネオヒメアオヒタキ)だ!」と叫ぶ。しまった、見逃した!と思ったが、すぐに暗い林床の木の枝に止まっているのを見つける。あれ、頭部は喉まで青いぞ。ちゃうやん!Malaysian Blue Flycatcher(マレーヒメアオヒタキ)やん。オッサン、冗談きついぞ。まぁ、見つけてくれたし、これも初見なので、文句は言わないでおこう。
 Blue flycatcherが飛んだ川沿いを今度はBlack-and-red Broadbill(クロアカヒロハシ)が飛ぶ。妙に毒々しいような、赤い色がは強烈な印象だ。こちらの知人T君が標識調査をして捕まえた時、ヒルが血を吸って、血が出ていたらしいのだが、胸から腹の羽の色があまりに濃い赤のため、全然血が出ているのに気がつかなかったそうだ。
 

 他の乗客には、バードウォッチングはあまり好評ではなかったらしく、その後はサルとヘビばかり。パイソンに続いて、バイパーを見せてもらったが、ヘビはどこが良いのかさっぱり分からん。さすがにテングザルのオスは見ごたえがあったが、クアラルンプールにも普通にいるカニクイザルを20分も見せられたのはうんざりした。イギリスから来た女性はやたらに、「ヘビを見せろ!」と言っていたが、白人はどうしてあれほどヘビ好きなんだろう。

 夕方6時過ぎにはすっかり日が傾いてきた。カニクイザルを見せるため、ガイドがボートを停めていた時に、白っぽい顔と白い尾をした、真っ黒な鳥が数羽横切った。どうも、Crested Fireback(コシアカキジ)らしいのだが、よく分からなかった。こういう時に「あっちに行ってくれ!」と言えないところがツアーの難しいところだ。

 晩飯を食べた後、今度はナイトウォークである。こういう類のものはあまり当たった試しがないので、期待していなかったのだが、これが実は大当たりだった。ナナフシなどの昆虫で始まったので、「たいしたことなかろう」と思っていたら、突然、地上50cmくらいの高さで寝ている小鳥を発見した。羽を膨らませ、ぼーっとしている。頭頂部は黒で、ごま塩状の白斑がある。顔から下は白く、腰、尾羽は赤茶色。「なんやろ、これ?」と皆で言い合っていたが、その場では結論は出ず。あまりにみんな近くで見ていたので、さすがに飛んで、別の木へ。しかし、寝起きだからか、フラフラとおぼつかない。後ほど図鑑で確認したところ、この鳥はStriped Wren-babbler(ミノチメドリ)と分かった。もちろん、初見である。

 遠くでは空砲のような音が何度かする。バカボンパパによると、ゾウを追う空砲の音なのだそうだ。そうこうしていると、足元にゾウの足跡が・・・。

 しばらく歩いたところで、ガイドが突然、「誰か、一番明るいライトを貸してくれ」と言って、立ち止まった。"Are you ready?"という声の後、暗闇に浮かび上がったのは、なんとBlue-winged Pitta(ミナミヤイロチョウ)だった。わずか20m先の地上から5-6mの木の枝先にボーっと止まっている。まるで標本のように、全然動かない。青い羽、赤い下尾筒、こんなものがこんなところで見られるとは!ヤイロチョウの仲間は地上性で、美しい羽からは想像もつかないほど見るのが難しい。全身をゆっくり見ることは稀なだけに、かなり印象に残った。
でかしたぞ、バカボンパパ!

 興奮冷めやらぬまま歩いていると、今度は目の前のトレイルをトラ模様の動物が横切った。ジャワジャコウネコだそうだ。一瞬ではあったが、全身を見ることができた。皆、バカボンパパに続いて、ザクザク森の中に入っていくが、単に追い立てているだけやん・・・。

さらにしばらく歩いて、木の手前で数人の人が何かを見ているのに出くわす。枝先を見ると、小鳥が止まっている。ほぉ、ムギマキのオスだ。4月の下旬には日本で見るこの鳥がまだボルネオに残っているとは・・・。この鳥も羽を膨らませ、まんまるな姿で眠っていた。昼見る姿とはまったく異なり、一瞬なんの鳥だかさっぱり分からない。

わずか1時間ほどだったが、中身の濃い散歩だった。寝る前に、今日3回目のシャワーを浴び、日焼けした体を冷ましてからベッドに入った。

後半戦はサイチョウ三昧。妻のボケもエンジン全開!



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