キナバル山探鳥記


世界遺産にも指定されているキナバル山。年間20万人が訪れる、マレーシア有数の観光地ですが、
実は世界的なバードウォッチングのメッカでもあるんです。
キナバル山へ行くときは、トレッキングシューズだけでなく、双眼鏡もお忘れなく。

マレーシアの鳥
 マレーシアのジャングルの鳥
 マレーシアの山の鳥
 マングローブの鳥
 マレーシア半島の探鳥案内
 マレーシア半島の野鳥報告
 ランカウィとキャメロン高原探鳥ツアー
 ゲンティン高原とクアラ・セランゴール探鳥ツアー
 ボルネオ(サバ州)での探鳥
 キナバル探鳥旅行 (2001年)
 キナバル山探鳥記 (2004年)
スカウ探鳥記
ダナムバレー探鳥記 1
ダナムバレー探鳥記 2
ダナムバレー探鳥記 3
ダナムバレー探鳥記 4
タビン探鳥記
フィールドノート・イン・ボルネオ
日本の鳥
オーストラリアの鳥
Photo Gallery
図鑑の書評
ンク集
キナバル公園本部から見るキナバル山の雄姿
© 2004 Koji TAGI


2004年5月3日

日本のゴールデンウィークにこちらの大型連休が重なり、キナバル公園本部の宿泊施設が軒並み満室状態の中、「連休中やし、どこも出かけないのも退屈!」ということで、混んでいるのを承知で出かけることにした。

午前6時に自宅を出発、途中U氏を拾い、そのままキナバル公園本部を目指す。夜型人間のはずのうちの奥さんは朝から元気にU氏に訳の分からないボケをかましている。いつもよりも早く起こされて、妙にテンションが高いらしい。

午前7時半、キナバル公園本部に到着。いつもと比べると公園内に駐車している車の数が多い。気にせずに、旧ビジターセンターの前に車を停め、探鳥を開始。

道路に沿って歩き始めると、Chestnut-capped Laughingthrush, Chestnut-crested Yuhina, Yellow-breasted Warbler等おなじみの面々が顔を出す。Sunda Laughingthrushが道路を横切り、森の中に飛び込むが、姿は見えない。

8時を過ぎると人の数が増え出した。登山をする人たちを送るバスがせわしなく通り過ぎていく。中国人たちがTシャツ、短パン、サンダルといういい加減ないでたちで賑やかに話しながら、歩いている。おかげさまで、鳥の方はさっぱり出なくなってしまった。愛想が良いのか悪いのか、Indigo Flycatcherだけは道路際の目の高さに出てきて、のんびりとした高い声で囀っている。全身光沢のある水色で、下腹部は汚白色、下尾筒は黄土色をしている。半島でよく見られるVerditer Flycatcherと同じグループの鳥だが、少し小さい。キナバル山での密度はかなり濃く、恐らくヒタキの仲間では最も普通種ではないだろうか。

車の量があまりに増えたため、道路際での探鳥をあきらめ、遊歩道に入る。人気もなく、静かな沢沿いの道で、翅の基部が青い光沢のある美しいトンボが飛ぶ。Indigo Flycatcher(写真右)が倒木の上でなにか忙しそうに動き回っている。どうやら、苔をむしって巣材にするつもりらしい。

昼食のため、一旦公園本部を離れ、ラナウの町へ。わずか30分ほどしか運転していないのに、かなり標高が下がったためか、暑い。人が集まる食堂に入り、Mee Goreng(焼きそば)を注文する。

昼食後、人で混み合う公園本部に戻ってもあまり鳥は見られないと判断し、一旦ロッジに向かうことに。この日予約していたのは、Wildlife Mountain Lodge。驚いたことに、どういうわけかロッジが見当たらない。仕方がないので、道路沿いにある別の施設で聞いてみると、「さぁ、聞いたことないなぁ」というつれない返事。どないなってるんや?やむなく、公園本部まで戻り、公園内のスタッフに聞いてみると、「XXXというロッジの裏にあるよ」とのこと。早速車を運転して、言われたロッジを探す。そのロッジまで来てみたものの、やはりみつからない。やむなく、ロッジの中で人に尋ねてみると、「裏にあるよ」と教えてもらう。無事に辿り着いたのだが、皆で「何で案内を出していないんだろう?商売になるんやろか?」と口々に文句を言い合う。部屋に入ってみて、Wildlife Expeditionsの施設と分かり納得がいく。同旅行会社を通じて予約が入るわけだから、案内など特にする必要はないのだ。

午後4時より再び公園本部へ戻り、探鳥。日中と比べると人は少なくなったものの、依然頻繁に車が通り過ぎるため、落ち着いて鳥を見られない。figの木に咲いている花にTemminck's Sunbirdが訪れている。赤いオスには細長く伸びた尾羽があるが、近くに来ない限りはっきりと見えない。「チッ、チッ、チッ」と高い声で囀り、忙しく花の間を飛び回っている。Golden-naped Barbetが「トルルルルルルッ、トルルルルルッ、トルルルルルッ」という独特の声で鳴いている。鮮やかな黄緑色の体をしている美しい鳥だが、ジャングルではなかなか見つからない。この日も一瞬その姿を見せただけだった。茶色く、地味なヒタキが枝先に止まっている。時々飛んでは虫を追いかけているようだが、すぐに戻ってくる。上面の濃さからすると、どうやらサメビタキのようだ。本来はシベリア東部、日本の山地で繁殖するような鳥なのだから、残っているのがやや不思議である。シギ・チドリの仲間では、若い未成熟な個体は渡らずに越冬地に滞在するらしいので、小鳥にも同様に渡らないような個体もいるのだろうか。

夕方6時にタイムアウト。薄暗くなったので、ロッジに戻る。ロッジの裏庭では、塒入り前なのか、Chestnut-capped Laughingthrushが騒いでいた。

5月4日

上の部屋の人の軋む足音と夜中の蚊の襲撃で寝不足の眼を擦りながら、6時に公園本部へ。さすがに早朝のためか、人の姿も少ない(車の数は多かったが)。

駐車場のそばですぐにHair-crested Drongoが出現。まだ消えていない外灯についている虫を食べている。距離が近いためか、頭の冠羽がよく見える。Short-tailed Green Magpieらしき影が横切るが、すぐに藪の中に隠れてしまう。外灯のそばの藪でちらつく影を探すと、Temminck's Babblerがみつかった。大型のBornean Treepieも朝は割合よく見られる。この日は外灯のそばで虫を探している姿が見られた。

朝早いわりに出現する鳥のバリエーションが乏しい。Chestnut-capped Laughingthrushだけがよく目立つ。キナバル公園の入り口付近でのどの白い小鳥がたまたま双眼鏡に入った。White-browed Shrike Babblerだ。大きな頭と太い嘴が特徴的である。

7時を過ぎると早速登山をする人たちのバスが動き出した。止むを得ないので、Silau-Silau Trailに入ってみることにする。森の中はひっそりとしており、まだ十分に日が差し込んでいない。物音に双眼鏡を向けると、喉の白い羽をいっぱいに膨らませたOchraceous Bulbulがみつかった。すぐそばでは、もう一羽が赤い木の実を口いっぱいに頬張っている。蔓に止まった小さな影はSnowy-browed Flycatcherのオスだ。わずか10cmほどの小さなヒタキで、オレンジ色の胸が鮮やかだ。

朝食を食べにロッジに一旦戻り、チェックアウトを済ませる。外人相手とはいえ、あの程度の施設でシングルRM210(約6500円)、ツインRM264(約7000円)は高すぎる。恐らく、二度と泊まらないであろう。車を飛ばして、一路Porlingへ。

午前9時半、Porlingでも温泉の周りに多くの人が既に集まっていた。さほど期待せずに森の中へ足を踏み入れる。気温は既に30度を超えており、蒸し暑い。蝉時雨の中、藪の中で何かが動いている。チメドリだろうと思っていたら、予想外にもRufous Piculetが顔を出した。オレンジ褐色の下面、赤い目、オリーブ色の上面をした、マレーシアで最も小さいキツツキである。尾羽が短く、非常にアンバランスな体型をしていることと、その小ささのためにキツツキにはとても見えないが、竹の幹などを叩いて、非常に大きな音でドラミングをする。色気を出して、デジタルビデオをセットしようとしていたら、いつの間にかいなくなっていた。

滝のそばでは、Indigo Flycatcherを濃くしたような青い小鳥が中枝に止まっている。暗い森の中のため、くすんだような色に見えるが、時々飛び上がると、鮮やかな青色に見える。White-tailed Flycatcherらしい。20cm近くもある、大きなヒタキだ。近くに巣でもあるのか、わずか2、3mの距離にある低木の幹に止まって、囀りとも警戒音とも聞き取れる声を出している。喉はややくすんだ色をしているようだ。嘴が大きい割に尾羽が短く、下から見上げるととてもヒタキには見えないずんぐりむっくりの体型をしている。これならデジタルビデオを使える!と取り出したら、「カセットにつゆがつきました」というエラーメッセージ。相変わらず肝心な時に使えない。仕方がないので、デジカメで撮ろうとしたら、今度は焦点がまったく合わない。これだけの至近距離で見られる機会のそうない鳥なのだから、見られただけで十分なはずなのに、我ながらまだまだ雑念を捨て切れていないらしい。

滝から戻る途中、figの実が鈴なりになっている木(写真上)を見つける。これだけ実がなっているのに、鳥が来ないのはどういうわけだろう。実が熟す時期を待っているんだろうか。

朝方piculetを見た場所の近くまで戻ってきた時、少し大きな小鳥が少し離れた木に飛び込むのが見えた。双眼鏡で探すと、顔から下が濃紅色のBlack-and-Red Broadbillが止まっていた。U氏は先日スカウで見逃したのだが、今回も双眼鏡に入れる前に飛んでしまった。「きっと、僕とは縁のない鳥なんですよ」と話していたが、鳥屋には必ずそういう相性の悪い鳥がいるものである。

トレイルの出口近くで目の早い奥さんが「カメレオンがいる!」と叫ぶ。東南アジアにカメレオンはいないのだが、尾がめちゃくちゃ長い、変なトカゲが木の上で日光浴をしてる。喉の皮がだらんと伸びていているが、何に使うのだろう。さらに数メートル上に、黄緑色の鮮やかなトカゲがやはり寛いでいる。こちらも喉の皮が伸びている。

温泉に遊びに来ている客たちを尻目に、駐車場に足を向けた。

二日間よく歩き回り、心地良い疲れは残ったものの、Kinabalu Parkに対して、「今後過度な期待は持たずに、訪問しよう」と感じた。かつてどうだったのかは知らないが、少なくともこちらに来て4回訪問した限りでは、半島のFraser's Hillには種類数、個体数とも遠く及ばないという印象を受けた。鳥がいそうな環境は残っていることから、観光地化が進んだため、鳥の数が減ったとしか思えない。残念なことではあるが、観光地化と自然環境の保全の両立が難しいことを改めて実感させられた。



マレーシアの鳥 キナバル山探鳥記(2005年)
マレーシアのジャングルの鳥 スカウ探鳥記
マレーシアの山の鳥 ダナム・バレー探鳥記1
マングローブの鳥 ダナム・バレー探鳥記2
マレーシア半島の探鳥案内 ダナム・バレー探鳥記3
マレー半島の野鳥報告 ダナム・バレー探鳥記4
ランカウィとキャメロン高原探鳥ツアー タビン探鳥記
ゲンティン高原とクアラセランゴール探鳥ツアー ボルネオでの探鳥
キナバル探鳥旅行(2001年) フィールドノート・イン・ボルネオ

マレーシアの鳥のページへ Menuへ
inserted by FC2 system