Somchartからは「森林性の鳥が見たいなら、もう1日ドイ・インタノンに行っても良いよ」と言われたが、この日は午後から会議のため、午前中に戻れるチェンマイ近郊の農耕地に出かけることになった。「僕は一日鳥を見ていても平気」という、なかなかの鳥好きガイドSomchartは最初「じゃ、5時で」と言ったが、夜明けが7時前なのに5時では時間を持て余すので、6時過ぎにホテル前に来てもらった。 車でわずか20分ほどのところにある農科大のフィールドステーションが本日の探鳥地。一日曇りだった昨日よりは天気が良いのか、晴れ間が見える。聞こえてくる声はKoel(オニカッコウ), Lineated Barbet(シロボシオオゴシキドリ), Common Tailorbird(オナガサイホウチョウ)の声。Somchartが遠くの枯れ木の上にBlack Baza(クロカッコウハヤブサ)が止まっているのを見つける。識別は時々怪しいことがあるが、よく見つけてくれる。茂みの手前でテープを流すと、喉の赤い、見慣れた鳥が出てきた。ノゴマのオス(写真前頁左下)だ。タイでは普通に越冬している鳥らしいが、こんな何気ない、普通の藪に生息しているとは驚いた。サンショウクイらしい声が聞こえたと思ったら、木のてっぺんにRosy Minivet(モモイロサンショウクイ)のオスが止まった。これも、昨日国立公園で見られると思っていた鳥なので、予想外だ。続いて、藪の中から、「タッ、タッ」というムシクイ系の声が聞こえてきた。草むらから姿を現したのはThick-billed Warbler(ハシブトオオヨシキリ:写真右下)。日本では珍しい鳥だが、これもタイでは普通に越冬している。ヨシキリの仲間は、越冬期は草原や湿地の草むらで見られることが多いが、ハシブトオオヨシキリは草むらから出てきて、木に巻きついたつる草をつたって樹冠まで上がっていくことが時々あるという。この日も数羽のハシブトオオヨシキリに出会ったが、中には10mくらいの高さまで上がっていく個体もいた。 ところ変われば、生息環境が変わるらしく、賑やかに飛び回るオウチュウを見てみると、マレーシアでは熱帯雨林内部で見られるGreater Racket-tailed Drongo(カザリオウチュウ)だった。草地の枯れ木に止まっていたのはOlive-backed Pipit(ビンズイ)で、これは日本では開けた松林などで冬はよく見られる鳥だ。 構内を10分ほど中に入り、竹やぶの手前でChinese Francolin(コモンシャコ)に挑戦。テープを流し、コモンシャコが反応するのを待つが、音沙汰なし。代わりに涼しげな声が聞こえてきた。テープで呼ぶと出てきたのはTickell’s Blue Flycatcher(ノドアカヒメアオヒタキ)のオス。昨日のムネアカヒメアオヒタキほどは近寄ってこないため、撮影はできなかった。ヒメアオヒタキの仲間は互いに非常に良く似通っているが、本種は標高の低い、やや乾燥した林に住み、他に平地の森にはHainan Blue Flycatcher(ハイナンヒメアオヒタキ)が生息する。一方、山地にはHill Blue Flycatcher(ミヤマヒメアオヒタキ)が住み、Blue-throated Flycatcher(ムネアカヒメアオヒタキ)はミヤマヒメアオヒタキにやや近い標高で見られる。 コモンシャコが出てこないので、あきらめて車に戻る途中、上空を2羽の猛禽が飛ぶ。一羽はShikra(タカサゴダカ)でもう一羽はRufous-winged Buzzard(チャバネサシバ)だ。さらに、50mくらい離れた木の茂みから、Asian Emerald Cuckoo(ミドリテリカッコウ)の声が聞こえてきた。しばらく探したが、姿は見つからず。 徐々に日が高くなり、鳥も少なくなってきた。この後、Siberian Stonechat(ノビタキ:写真左)、Red Avadavat(ベニスズメ)が見られたが、それ以外はぱっとしない。Somchartが遠くの木の上に止まるViolet Cuckoo(スミレテリカッコウ)を見つけたが、望遠鏡に入れる前に飛んでしまう。 その後、Green Bee-eater(ミドリハチクイ), Ashy Woodswallow(ハイイロモリツバメ), Indochinese Bushlark(チャバネヤブヒバリ)などを見かけたが、お目当ての種には出会えず。 昼前に三脚をたたみ、探鳥を終了。二日間ガイドをしてくれたSomchartたちに礼を言い、ホテルへ戻った。見たいと思っていたRufous-bellied Niltava(コチャバラオオルリ)やPurple Cochoa(ムラサキミヤマツグミ)には会えなかったが、短い期間ながら、134種を記録し、充実したバードウォッチングだった。 |
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